子供のような可憐な声で歌うブロッサム・ディアリーの生涯と名唱

ブロッサム・ディアリー(Blossom Dearie 1924年~ 2009年)の声は超個性的。

ピアノを弾きながら、弾き語りのスタイルで歌う子供のような声は、1度聴いたら忘れられません。

子供のような声ですが、かわいこぶりっこな感じはしません。

ファニー・ヴォイスなのですが、なんとなく好ましく感じる声です。

初めて聴いたときは、そのファニー・ヴォイスに驚きましたが、不思議なことに少しも耳障りな感じはしませんでした。

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アメリカの小説家ドン・ウィンズロウの小説「歓喜の島」(角川文庫)に出てくる、主人公のジャズシンガーの恋人はブロッサム・ディアリーと言われています。

また同じくジャネット・イヴァノヴィッチが書いた小説で、バウンティ・ハンターのステファニー・プラムの活躍を描いたシリーズがあって、私の愛読書でもあるのですが、シリーズの中のどの本かは忘れましたが「ニューヨークにあるどこかの店で、ブロッサム・ディアリーが歌っているであろう夜」という趣旨の記載があって、ブロッサム・ディアリーって愛されているんだなあと、嬉しく思いました。

 

歳を重ねても、ずっとこの声。ライブ盤で曲の合間にしゃべっているのも聞きましたが、MCもファニー・ヴォイスのまま。

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ブロッサム・ディアリーの生涯

ブロッサム・ディアリーの生い立ち

ブロッサム・ディアリーは、ニューヨーク州イーストダラム出身。

高校卒業後、ニューヨークに出てきました。

1940年代は、いくつかのコーラスグループに参加し、またジャズクラブやラウンジなどでピアノを弾いて歌う、いわゆるカクテル・ピアニストとして活動。

ビル・クロウの著書「さよならバードランド」によると1940年代半ばごろ、のちにアレンジャーとして成功する面倒見のよいギル・エヴァンス(Gil Evans)のまわりには、まだ売れる前でお金がなかったマイルス・デイヴィス(Miles Davis)や、若かりし頃のジュリー・マリガン(Gerry Mulligan)などの若いミュージシャンたちが集まっていたそうですが、その中にはブロッサム・ディアリーもいたそうです。

ブロッサム・ディアリーは1952年にパリに移り住み、ミシェル・ルグラン(フランスのジャズ・ピアニスト)の実姉らとコーラス・グループ、ブルー・スターズ(Blue Stars 1952年~1955年)を結成。

フランス語で歌った「ララバイ・オブ・バードランド(Lullaby of Birdland)」をヒットさせました。

それがこちら。

ブルー・スターズの活動と並行して、シャンゼリセのお店などでカクテル・ピアニストの仕事をしていたブロッサム・ディアリーは、アメリカのレコードレーベル、ヴァーヴの主宰者に見いだされ、アメリカに帰国しでデビュー。

そのデビューアルバム「ブロッサム・ディアリー(Blossom Dearie)」に収録された「ラバーマン(Lover Man)」。

1960年代のブロッサム・ディアリーはフランス、イギリスなどのヨーロッパとアメリカを行き来きしながら活動。

晩年はニューヨークのジャズクラブを拠点とし、亡くなる少し前まで歌っていました。

 

ビル・クロウの著書「さよならバードランド」についてはこちらでご紹介しています。

ジャズメンの成長とジャズの衰退を読む「さよならハードランド」
「さよならバードランド」。ジャズのベーシスト、ビルクロウが、自己がジャズメンになるまでにどんな勉強をして、どんな風に仕事を得ていったかを中心に、出会ったジャズメンたちのエピソードと、老舗ジャズクラブ「バードランド」の衰退も描かれます。

ブロッサム・ディアリーの名唱&名曲

ブロッサム・ディアリーの愛らしい声が魅力的なこの曲。

「この声なら、誰か見守ってくれるやろ」とつい思ってしまいます。

この「ワンス・アポン・ア・サマータイム(Once Upon a Summertime)」のアルバムは「飾りのついた四輪馬車(The Surrey With The Fringe On Top)」「ティーチ・ミー・トゥナイト(Teach Me Tonight)」「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーヴァー・ミー(Someone to Watch over Me)」「アイ・ウイッシュ・ユア・ラヴ(I Wish Your Love)」など、どれもブロッサム・ディアリーがチャーミングで捨て曲なし。

これも「ワンス・アポン・ア・サマータイム(Once Upon a Summertime)」のアルバム収録曲ですが、バースからのバラードになった「ティー・フォー・トゥー(Tea for Two)」

ゆったりとしたテンポとソフトな声が、心地よいです。

なんとなくセクシーなムードがただようこの曲も、ブロッサム・ディアリーが歌うと清潔感のあるお色気が漂います。

あとブロッサム・ディアリーがアップテンポで歌う「ワン・ノート・サンバ(one note samba)」もおすすめです。

 

かわいらしい声なのに、ちょっと小悪魔的な感じもあって、マドンナとはまた違ったタイプの気の強さも感じられて、ブロッサム・ディアリーを知った当初は、この人ばかり聴いてました。

天気のいいお昼間に、窓際で日向ぼっこしながら聴きたい感じのジャズです。

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コーヒーより紅茶が合いそう。