ローランド・カーク(Roland Kirk 1935~1977年)が演奏している映像を初めて見たとき、コントかと思いました。
一瞬
「この人、コメディアン?」
と思ってしまったのです。
(ローランド・カーク、ごめんなさい)
ローランド・カークの場合、まず演奏するスタイルに驚かされます。
首からは2本、時には3本か、それ以上のサックスなどの管楽器をぶら下げ、あろうことか同時に2~3本のサックスをくわえて演奏してしまいます。
それでいて、その奇抜な演奏スタイルにもかかわらず、彼の演奏はテクニカルでソウルフル。
聴きごたえのあるジャズです。
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ローランド・カークの奇抜な演奏スタイル
ローランド・カークは、首から2~3本、サックスなどの管楽器をぶら下げ、時には脇にはソプラノサックスをはさんで持っていることもあります。
そして曲の途中で、楽器を持ち換えて2~3種類の楽器を吹きます。
誰かのライブを見に行って、シットイン(飛び入り)するときも、彼はこのスタイルです。
その状態のまま、フルートを吹いている時もあります。
フルートを吹きながら、ハミングもします。
(ちなみに、テナーサックスの川嶋哲郎さんもフルートを吹きながら、ハミングでフルートとハモっておられます。)
ローランド・カークは、口に2~3本の管楽器を加え、同時に鳴らすのも得意。
しかもその状態で、和音を奏でることができます。
ローランド・カークの奇抜なスタイルは、まるで大道芸人のようです。
その特異な演奏スタイルから、一時期日本では「グロテスク・ジャズ」と紹介されていたこともあります。
しかしながらローランド・カークの演奏は、決して大道芸的な音楽ではありません。
ましてや「グロテスク」でもありません。
力強く、超技巧的、ソウルフルなジャズです。
多芸、多才なローランド・カーク
ウィキペディアによると、ローランド・カークが演奏できる楽器は、全部で22楽器!
メインはテナー・サックスですが、彼はアルト・サックス、ソプラノ・サックス、フルートなども吹きます。
テナー・サックスとアルト・サックスの2つを比べても、同じ「C」の音を出すのに、指使いが違います。
それからテナー・サックスは「Bb」、アルトサックスは「Eb」の楽器なので、吹く時に、頭の中で、それぞれ違う調に移調する必要もあります。
指使いも、キーも違う楽器を同時に吹いて、しかも3本の楽器でそれぞれ違う音を出して和音にするなんていう離れ業をやってのけるというのが、ローランド・カークのすごさの1つです。
ローランド・カークの生い立ち
ローランド・カークはオハイオ州のコロンバスに生まれました。
2歳の時、医療ミスで失明します。
そして10代のころ、ローランド・カークは、オハイオ州の盲学校で学びます。
15歳で彼はプロのミュージシャンとして活動を開始しますが、最初の仕事はリズム&ブルースのバンドでの仕事でした。
ローランド・カークは14歳の時には、すでに2本の管楽器を同時に吹くことができました。
ジャズサックスプレーヤーのハンク・クロフォード(Hank Crawford)は、14歳だったローランド・カークが、2本のサックスを同時に、しかも見事な演奏をするのを見て驚愕したそうです。
そしてすでに、その時点でローランド・カークの個性は確立していたと語っています。
21分間、息継ぎなしで演奏できたローランド・カーク
ローランド・カークは循環呼吸法(簡単に言うと、口では息をはきながら、鼻で息をすう方法。)で、音を長くのばしたり、息継ぎなしで長いフレーズを吹くことができました。
「サクソフォン・コンチェルト(Saxophone Concerto)」という曲を、21分間の間、息継ぎすることなく吹ききっています。
正統派ジャズから、ボサノバ、ソウル、ポップスまで
ローランド・カークは基本的にはジャズメンですが、演奏する曲はジャズにとどまりませんでした。
1964年に大ヒットした、クインシー・ジョーンズ(Quincy Delight Jones)の「ソウル・ボサノヴァ(Soul Bossa Nova)」にも参加しています。
ローランド・カークはストレートアヘッドなジャズだけでなく、バート・バカラック(Burt Bacharach)の名曲「アイ・セイ・ア・リトル・プレイヤー(I say a little player)」やレオンラッセルのヒット曲「マスカレード(This Masquerade)」のような曲も演奏しています。
そしてこんな、ロマンティックな曲も。
ローランド・カークは、チャールズ・ミンガス(Charles Mingus) のバンドに一時、在籍していたこともあります。
ロック界にもファンがいたローランド・カーク
ローランド・カークは、ジャズミュージシャンやジャズファンに愛されただけではありません。
ロック界でも、ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)、ポール・ウェラー(Paul Weller)、レディオヘッド(Radiohead)のジョニー・グリーンウッド(jonny greenwood)などがローランド・カークのファンでした。
ローランド・カークのすごい所は、誰もまねできない演奏スタイルを築き上げたこと。
そしてローランド・カークのジャズは、ソウルの雰囲気がただよいます。
奇抜なスタイルに騙されて敬遠して聴かないでいると、損します!