ロレツ・アレキサンドリア(Lorez Alexandria 1929年~2001年)。
ロレツ・アレキサンドリアはロレス・アレキサンドリアと表記されることもあります。
「20世紀において、才能があるのに過小評価されている歌手の1人」と言われています。
私はロレツ・アレキサンドリアは、この曲の歌唱で知りました。初めて聴いたときは「虹の彼方に(Over The Rainbow)」がこんなふうになるなんて!と驚きました。
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ロレツ・アレキサンドリアの生涯
ロレツ・アレキサンドリアの生い立ち
アメリカのイリノイ州シカゴ出身。
教会の聖歌隊でゴスペルを歌うようになり、ツアーもおこないました。
やがてロレツ・アレキサンドリアは単独で地元のクラブなどで歌うようになり、地元シカゴで評判となり、小さな地元のレーベルで録音もしました。
1957年にキングレコードと契約し、デビュー。
36年間の活動期間中に、20枚のアルバムを残しました。
ロレツ・アレキサンドリアの名曲
ビリー・ホリディ(Billie Holiday)とよく組んでいたテナー・サックスのレスター・ヤング(Lester Young)へのトリビュートアルバム「 ロレツ・シングス・プレス(Lorez Sings Pres)」から。
ここでのロレツ・アレキサンドリアのスキャットがリラックスした感じでありながら、エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)を彷彿させると話題になったそうです。
アフリカ系アメリカ人シンガーは、腹の底から出すような地声という先入観がいけないのかもしれませんが、やっぱり白人系のシンガーの声に聴こえます。
でもフレージングはアフリカ系の雰囲気。
そのギャップが魅力。
ロレツ・アレキサンドリアが敬愛するビリー・ホリディ(Billie Holiday)の愛唱歌。
ここでもロレツ・アレキサンドリアは、軽々とフェイクしまくっていて「この曲が、こんなふうになるなんて!」と驚かされます。
ロレツ・アレキサンドリアが歌うこの曲を聴くと、エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald) やサラ・ヴォーン(Sarah Vaughan) 、カーメン・マクレエ(Carmen McRae)らに引けを取らないと思うのですが。
本当になぜもっと有名でないのかが不思議。
浮気して口紅をつけて帰ってきた夫(彼氏?)に
「言い訳はしないで。帰ってきてくれてうれしいわ」
とせつなく歌うこの曲。
ロレツ・アレキサンドリアが歌うと、悲しみをこらえながらも、浮気者の夫を受け入れる、やさしさが感じられます。
このバラードもフェイクの感じ、フレージングの感じが唯一無二といった感じ。
「もう2度と恋なんてしないわ」と歌うこの曲は大好きな曲の1つ。
随所にロレツ・アレキサンドリアの小技的なフェイクが効いていて、それがうるさくならず小粋な感じになるのが、ものすごいセンスの持ち主なんだろうなと思います。
ジョージ・ベンソン(George Benson)やホイットニー・ヒューストン(Whitney Houston)も歌った「ザ・グレイテスト・ラヴ・オヴ・オール(The Greatest Love of All)」も、しっかりとジャズに落としこんでロレツ・アレキサンドリアならではの歌にしていて、おすすめです。
ソフトな声で軽やかに歌う歌声は、アフリカ系アメリカ人らしからぬ感じで、それがまた新鮮。
私は初めて聴いたとき、てっきりブルースのフィーリングを持った、年配で円熟味が増した白人系のシンガーだと思ってしまいました。
なんというかロレツ・アレキサンドリアの歌は、こってりさが無くてさっぱりとした感じ。
モダンで、クール。彼女ならではのフェイクで、聴きなれた曲もいちいち新鮮。
そして、深さや味わいがあって、やさしい。そんな感じです。