「愛について書かれた歌があるけど、私のためのものじゃない。。。彼のキスも、私のものじゃない。」とむくわれない恋と、自分の不運をつらつらと歌いあげる悲しい歌「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」
アップテンポ、ミドルスイング、バラードと、いろんなテンポに合う曲です。
それだけに歌い手によって、がらっとイメージが変わる曲の一つ。
「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」をいろんな歌手のバージョンで聴き比べする、ヴォーカル編です。
「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」のインスト編はこちらをご覧ください。
エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)は、「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」を、せつせつとバラードで歌いあげます。
彼女はこの歌で、第二回グラミー賞の最優秀女性ボーカル賞に輝きました。
チェット・ベイカー(Chet Baker)は、通常バラードで歌われることが多いバースを、アップテンポのスイングでイントロがわりにペットで奏でた後、例のソフトな声で「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」をつぶやくように歌います。
ダイナ・ワシントン(Dinah Washington)は軽快なイントロの後、いったんテンポを落としてバラードでバースを歌った後、再び軽快なスイングに戻って、パンチの効いた感じで「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」を歌います。
ビリー・ホリデイ(Billie Holiday)の「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」は、振り向いてもらえない相手に恋した自分を自嘲するかのよう。
スイングして軽めの感じで歌っています。
エッタ・ジョーンズ(Etta Jones)の「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」はブルージーに、そして大きな、深い悲しみで歌っているような感じ。
思いのたけをぶつけるように歌うのもあり、静かに独り言を言うように歌うのもありな「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」
個人的にはエッタ・ジョーンズ(Etta Jones)の歌う「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」にはまってしまって、こればかり聴いていたときもあります。
悲しみを切々と訴えかけるような感じが、いいです。
ダイアナ・クラール(Diana Krall)はピアノ1本で。
バースから丁寧に歌い上げ、ルバート気味のゆったりとしたバラードでの「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」
夜、部屋で1人、終わった恋に想いをはせている感じ。
ソウル界の大スター、サム・クック(Sam Cooke)は、なんと!まさかの三連で「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」を歌っています!
ちょっと雰囲気が「オンリ~ユウ~~」を思わせます。
サム・クックは「ジーズ・フーリッシュ・シングズ(These Foolish Things)」も、バリバリの三連ソウルテイストで歌ってます。
根っからのソウルな人。
アン・バートン(Ann Burton)はバースから丁寧に、語るように歌います。
ピアノ1本で、コーラスからは軽くスイングで。
大人の女性が、過ぎ去った恋を振り返るように歌う「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」
どの「バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)」も甲乙つけがたい。
その時々の気分で、聴きたいバージョンが変わりそう。
この曲はバースが美しいので、バラードだけじゃなく、スイングでもバースを歌うシンガーが多いように思います。
エッタ・ジョーンズ(Etta Jones)のバージョンが大好きですが、ダイアナ・クラール(Diana Krall)やアン・バートン(Ann Burton)の、バラードのバージョンも捨てがたい!
(いや、捨てんでええねんけど)