ジャズフルートの奏者といえば、ジェレミー・スタイグ(Jeremy Steig)、ヒューバート・ロウズ(Hubert Laws)、井上信平さんなどがおられますし、普段はサックスを吹いていて時々フルートを吹くジャズメンならあげていくときりがないほど、現代においてはフルートはその音色でジャズの景色をガラっと変える楽器として存在感を示しています。
でもジャズフルートの第一人者と言えば、間違いなくハービー・マン(Herbie Mann 1930年~2003年)の名があがると思います。
それまでジャズではサブ的な存在だったフルートに専念して、フルートもジャズを十二分に演奏できるということを証明した人です。
そしてネットで調べてみると、若いときにハービー・マンを聴いてジャズを好きになった人の多いこと!
そんなハービー・マンの名盤、有名アルバムのご紹介です。
ハービー・マンの名盤
「ハービー・マンの名盤はこれだ!」というのは、本当に人によって違います。
裏を返せば、それだけ名盤が多い、よいアルバムが多いということかもしれません。
そんな中でも特に有名なアルバム、ハービー・マンを最初に聴くなら最低限このアルバムを、と思われるものをご紹介します。
メンフィス・アンダーグラウンド(Memphis Underground)1969年
「えっ?これがジャズのアルバム?」と思ってしまうくらい、ソウル、ファンク、R&B色の濃いアルバムです。
じゃあジャズじゃないのか?と聞かれれば、やっぱりジャズ。
「ホールド・オン (Hold On, I’m Comin)」や「チェイン・オブ・フールズ (Chain of Fools)」のハービー・マンのフルートでのバリバリ、ぐいぐいのソロを聴けば、このアルバムはジャズのアルバムだとわかるはず。
フルートはふわっとした音の出方をする楽器なので、しっかりとしたビートを出すには不利な楽器のように思うのですが、ハービー・マンはそのフルートで強烈なグルーブを生み出しています。
聴いているとわけもなく、楽しくなってくるアルバムです。
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メンバーは、フルートのハービー・マン(Herbie Mann)、ヴィブラフォンとコンガのロイ・エアーズ(Roy Ayers)、ギターはラリー・コリエル(Larry Coryell)とソニー・シャーロック(Sonny Sharrock)とレジー・ヤング( Reggie Young)、ベースはミロスラフ・ヴィトウス(Miroslav Vitouš)とトミー・コグビル ( Tommy Cogbill)とマイク・リーチ( Mike Leech)、オルガンのボビー・エモンズ( Bobby Emmons)、ピアノとエレクトリックピアノのボビー・ウッド( Bobby Wood)、ドラムのジーン・クリスマン( Gene Chrisman)
ちなみに収録曲の「ホールド・オン (Hold On, I’m Comin)」はR&Bの大御所デュオ、サム&デイヴ(Sam & Dave)の大ヒット曲。
「チェイン・オブ・フールズ (Chain of Fools)」は、こちらもソウル界の大御所アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)の大ヒット曲。
ヴィレッジゲートのハービーマン(Herbie Mann at the Village Gate)1961年
ニューヨークにあった有名なジャズクラブ、ヴィレッジ・ゲート(The Village Gate)で行われたライブを収録したライブ盤。
収録曲はたった3曲というコンパクトさですが、ライブという場での臨場感あふれる演奏がたまらないアルバムで、名盤としてあげられることがことに多いアルバムです。
個人的には、スタンダード中のスタンダード的な「サマータイム(Summertime)」がラテンに変身しているのがツボでした。
先に取り上げた「メンフィス・アンダーグラウンド(Memphis Underground)」よりも、ジャズ色は濃いめです。
メンバーは、フルートのハービー・マン(Herbie Mann)、ヴィブラフォンのヘイグッド・ハーディ(Hagood Hardy)、ベースはアーメド・アブドゥル・マリク(Ahmed Abdul-Malik)とベン・タッカー(Ben Tucker)、コンガとパーカッションのレイ・マンティラー(Ray Mantilla)、アフリカンドラムとパーカッションのチーフ・ベイ(Chief Bey)、ドラムのルディ・コリンズ(Rudy Collins)
プッシュ・プッシュ(Push Push)1971年
「メンフィス・アンダーグラウンド(Memphis Underground)」と同じく、ソウルやR&B、ファンクの雰囲気が漂いますが、こちらはもっとバリエーションに飛んでいる感じです。
1曲目のハービー・マンのオリジナル「プッシュ・プッシュ(Push Push)」はオールマン・ブラザーズ・バンド(The Allman Brothers Band)のギタリスト、デュアン・オールマン(Duane Allman)のロックギターを全面に押し出して、ロック色が濃い、ご機嫌なナンバーです。
その他、 しっとり系のボサノヴァに変身した「ホワッツ・ゴーイン・オン(What’s Going On)」をはじめ、「スピリット・イン・ザ・ダーク(Spirit In The Dark)」「イフ(If)」など、ソウルやポップスの名曲の数々も新たなスタイルに変身していて、そこらあたりも明らかにジャズだなあと思います。
メンバーは、フルートのハービー・マン(Herbie Mann)、ギターのデュアン・オールマン(Duane Allman)、ピアノとエレトリックピアノ、オルガンのリチャード・ティー(Richard Tee)、パーカッションの(Ralph McDonald)は全曲参加。
1,2,6曲目にはギターのコーネル・デュプリー(Cornell Dupree)も参加、3~5,7,8曲目にはギターのデヴィッド・スピノザ(David Spinoza)、2,6曲目は、ジャズでは珍しいハープ(ハーモニカじゃなくて弦楽器のほうのハープ)のジーン・ビアンコ(Gene Bianca)も参加。
ベースは1,2,6曲目はチャック・レイニー(Chuck Rainey)、3,7,8曲目はジェリー・ジェモット(Jerry Jemmott)、4,5曲目はドナルド・ダック・ダン(Donald “Duck” Dunn)
ドラムは1~3,6~8曲目はバーナード・パーディ(Bernerd Purdie)で4,5曲目はアル・ジャクソン・ジュニア(Al Jackson Jr. )
ドゥ・ザ・ボサ・ノヴァ(Do the Bossa Nova with Herbie Mann)1963年
スタン・ゲッツ (Stan Getz)も、同時期の1962年に「ジャズ・サンバ(Jazz Samba)」、1964年に「ゲッツ/ジルベルト(Getz/Gilberto)」とボサノヴァを取り入れたアルバムを制作していますが、ハービー・マンもこの「ドゥ・ザ・ボサ・ノヴァ(Do the Bossa Nova with Herbie Mann)」でボサノヴァを流行させました。
個人的にはスタン・ゲッツ (Stan Getz)のボサノヴァは大衆的でポップな感じ、ハービー・マンはよりブラジル色が濃いボサノヴァといった感じを受けています。
フルートのようなふわっとした音色の楽器で、パーカッシブにボサノヴァまでやっちゃうのだから、頭が下がります。
メンバーは、フルートのハービー・マン(Herbie Mann)、ギターは2,6曲目がドゥルヴァル・フェレイラ(Durval Ferreira)、1~7曲目がバーデン・パウエル(Baden Powell)、トランペットのペドロ・パウロ(Pedro Paulo 2,6曲目に参加)、アルトサックスのパウル・モウラ(Paulo Moura 2,6曲目に参加)、ピアノとヴォーカルのアントニオ・カルロス・ジョビン(Antônio Carlos Jobim 3,5曲目に参加)、ピアノはルイス・カルロス・ヴィーニャス(Luiz Carlos Vinhas 4曲目に参加)とセルジオ・メンデス(Sergio Mendes 2,6曲目に参加)、ベースはガブリエル(Gabriel 1,7曲目に参加)、パパウ(Papao 1曲目に参加)、オクタビオ・バイリー・ジュニア(Octavio Bailly Jr. 2,6曲目に参加)、ドラムはジュキーニャ(Juquinha 7曲目に参加)、ドン・ウン・ホマォン(Dom Um Romão 2,6曲目に参加)、パーカッションはZezinho e Sua Escola de Samba(訳すと「セジーニョと彼のサンバ学校」 8曲目に参加)
メンバーは、ハービー・マン以外は全員、ブラジルのミュージシャン。
この4枚のアルバム以外にも
- ウィンドウズ・オープンド(Windows Opened)1968年
- カミン・ホーム・ベイビー (Comin’ Home Baby)1965年
- スタンディング・オベーション・アット・ニュイポート(Standing Ovation at Newpor)1965年(←まだ若いチック・コリア(Chick Corea)が参加)
などなど。。。。
ノリのいいのが聴きたい、ちょっと今までのとは違うジャズが聴きたいというときにハービー・マンはおすすめです。
ハービー・マンの生い立ちやその生涯については、こちらに書きました。