ケニー・バロン(Kenny Barron1943年~)
ラテンジャズを弾くときの彼は、軽やかで、リズミカルな、まるでパーカッションのようなピアノです。
バラードも、彼ならではのロマンティックな美しさ。
ケニー・バロンは、リーダーやサイドマンとして数百ものレコーディングをおこなったと言われています。
パーカッションのようなケニー・バロンのピアノ
スタン・ゲッツ (Stan Getz)が亡くなる4か月前にレコーディングした、ケニー・バロンとのデュオで、名盤と言われている「ピープル・タイム(People Time)」
スタン・ゲッツ (Stan Getz)とケニー・バロンの2人だけで、多彩なジャズを聴かせます。
「ピープル・タイム(People Time)」の中でも、特に私のお気に入りなのが、ラテンのリズムで演奏される「ナイト・アンド・デイ(Night and Day)」
私は、この曲のケニー・バロンが奏でるイントロに、ショックを受けました。
ピアノなんですが、はっきりとリズムを打ち出していて、まるでパーカッションのようです。
こちらが、その演奏です。
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リズムを打ち出すと言っても、ガンガンにピアノを弾くのではなく、軽いタッチ。
まるでサンバのパーカッションが、リラックスしたリズムでうきうきさせるような感じ。
それをピアノでやってのけています。
スタン・ゲッツ (Stan Getz)はビル・エヴァンス(Bill Evans)ともデュオのアルバムを出していて、こちらでも同じく「ナイト・アンド・デイ(Night and Day)」をラテンで演奏しています。
どちらがいい、悪いではなく、同じ曲を同じラテンのリズムで演奏しても、ピアノが違うとこれだけ違います。
ケニー・バロンの経歴
ケニー・バロンの生い立ち
ペンシルベニア州のフィラデルフィア出身。
お兄さんのビル・バロン(Bill Barron)はテナーサックス奏者。
ケニー・バロンは19歳でディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)のバンドに参加します。
1978年にエンパイアステートカレッジ(Arts from Empire State College )という芸術系のカレッジを卒業。
それから今までの間に、グラミー賞に何度もノミネートされています。
また2009年には権威あるアメリカ芸術科学アカデミーのフェロー(著しい貢献があった人に授与する称号)に選出されました。
現在、ケニー・バロンはジュリアード音楽学校で教鞭をとっていて、彼の教え子には、アール・マクドナルド(Earl MacDonald)、ハリー・ピケンズ(Harry Pickens)、 アーロン・パークス(Aaron Parks)がいます。
演奏者としても、指導者としても、最高レベルの人のようです。
ケニー・バロンのおすすめ曲
1967年 ケニーバロン24歳の時のアルバム「ユー・ハド・ベター・リッスン(You Had Better Listen)」
そこから表題曲。
24歳という若さ溢れる演奏です。
1991年の「コンファーメイション(Confirmation)」は師匠のバリーハリス(Barry Harris)と一緒にプレイしたもの。
師匠と弟子で、さすがに息がぴったりです!
でも「Confirmation」って「確認」という意味もあります。
ケニー・バロンがちゃんと教えたとおりに弾いているか、師匠のバリー・ハリス(Barry Harris)が確認するのかしら?それともお互いのプレイを確認しながら弾くということかしら?と想像が広がります。
「コンファーメイション(Confirmation)」のアルバムに収録されている、おしゃれで小粋な「テンダリー(Tenderly)」
この小さく「クッ」とつっかえるような独特の間が、個性的なバラードになっていて、とっても好きです。
そして最新版は2018年ブルーノートから出たアルバム「コンセントリック・サークルズ(concentric circles)」
ベースはケニー・バロン・トリオではおなじみの北川潔さん!
どの曲もいいけど、この「アイム・ジャスト・セイイング(I’m Just Sayin’)」は思わずからだが動き出す、力強いグルーブと、新鮮なリズムの曲。
私は2017年の夏、来日されたケニー・バロン氏の演奏を聴きました。
その時のベースも北川潔氏。
ドラムはMcClenty Hunter氏で、ドラムだけアルバムとは違う人。
ケニー・バロン氏は、その時74歳。
枯れるということを知らない、エネルギッシュな演奏でした。
私が聴きに行ったときも、ラテンっぽいのが多めな感じで、それもうれしかったです。
こちらは、大阪市北区にある「Jazz On Top」というお店の壁に書かれた、ケニー・バロン氏のサイン。
彼がお店にワインを飲みに来たときに、書いたのだそうです。