パノニカ・ドゥ・コーニグズウォーター (Pannonica de Koenigswarter 1913年~1988年)、愛称はニカ(Nica)
そのニカが、交流のあった多くのジャズメンたちを撮った写真と、ニカがジャズメンたちにした3つの質問の答え(3つの願い)で構成された写真集が「3つの願い(Three Wishes)」
ニカは、ビバップの時代に破滅的な生活を送り生活に困窮したり、病に倒れたジャズメンたちを、母親のように世話をした女性です。
ジャズメンたちに感謝され、ニカに捧げられた曲は20曲あまりもあると言われています。
ジャズメンたちがニカに捧げた曲については、こちらに書きました。
そのニカが撮ったジャズメンの写真と、ジャズメンたちそれぞれの「3つの願い」で構成された本があります。
こちらは日本語版の「3つの願い(Three Wishes)」
こちらは英語版の「3つの願い(Three Wishes)」
ニカことパノニカ・ドゥ・コーニグズウォーター (Pannonica de Koenigswarter) については、こちらに書きました。
キャッツハウスでニカが撮影したジャズメンたちの素顔
ニカはホテル暮らしをしていた自分のスイートルームに、麻薬中毒のはてに行くあての無くなったチャーリー・パーカー(Charlie Parker)を引き取り、そして看取ります。
人種差別が激しかった、この時代。
白人女性で、しかも男爵夫人であるニカが、ホテルの自室でアフリカ系アメリカ人を看取ったことは、かなりのスキャンダルとなります。
そのことでホテル暮らしができなくなったニカは、ニュージャージー州に家を購入。
保護した100匹ほどの猫もその家に引き取っていたため、ニカの住む家はキャッツハウスと呼ばれました。
キャッツハウスには、ニカを慕う多くのジャズメンが遊びに来ました。
彼らはニカの家で、セッションをしたり、おしゃべりをしたり、くつろいで過ごしていたようです。
そしてこの家に、晩年のセロニアス・モンク(Thelonious Monk)を引き取って面倒をみました。
チャーリー・パーカー(Charlie Parker)についてはこちらに書いています。
300人のジャズメン、それぞれの「3つの願い」
ニカは1961年から1966年ごろまで、自分の家でくつろぐジャズメンたちを写真に撮るようになりました。
そして彼ら一人一人に「願いが3つ叶うとしたら何を願う?」と尋ねます。
この本は、そんなジャズメンたちの写真と、ジャズメンたちが答えた「3つの願い」で構成されています。
ステージで見せる顔とはまた違う、くつろいだ普段の姿のジャズメンが見られます。
収録されているジャズメンは、300人ほど。
ニカがどれだけジャズメンたちに慕われていたかが分かります。
さまざまな「3つの答え」を読むのが楽しい
いくらビバップがセンセーショナルにもてはやされ流行していても、アフリカ系アメリカ人のジャズメンたちは白人よりも安いギャラでした。
しかも破滅的な生活を送る者は麻薬やアルコールにお金を使うので、ジャズメンとして人気があるにも関わらず生活に困窮しているミュージシャンもめずらしくありませんでした。
ゆえに「お金」とという答えも、多くあります。
でもそこは一癖も二癖もあるジャズメン。
単に「お金」というだけでなく、いろいろユニークな言い方をしていたり。
「お金」以外にも、当時深刻だった人種差別についての願いもあります。
ずばり「白人になりたい」と言っている、あの人も。
誰が何を言ったか。
あの人がこんなことを言うなんてと意外だったり。
「なるほど、あの人なら言いそうだ」と納得したり。
ストレートな答えもあれば、ちょっと哲学的な答えもあったり。
バリエーションも豊かです。
プロのカメラマンが撮った写真ではないので、ちょっと素人っぽさも感じますが、そこがまた家庭のスナップ写真を見ているような、よりプライベートなジャズメンの姿を見ているような感じ。
永久保存版!
ニカの生涯については、こちらに書きました。
ニカに捧げられた曲のご紹介はこちら。