スパイク・リー監督の1990年に公開された映画、「モ・ベター・ブルース(Mo’ Better Blues)
天才ジャズトランペッター、ブリーク・ギリアムの半生を描いた映画です。
ちなみにブリーク・ギリアムは、架空の人物。
実在しません。
でも映画を見ていると、実在の人物に思えてしまいます。
こういうトランぺッター、実際にいそう!
ジャズファンなら思わずにやりとするシーンが満載
映画に登場するジャズ・クラブの名前が、チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)の自伝のタイトルと同じです。
チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)の自伝?につていは、こちらをご覧ください。
また主人公のブリーク・ギリアムがあるトラブルに巻きこまれますが、実在のトランペッター、チェット・ベイカー(Chet Baker)のエピソードを連想させます。
ブリーク・ギリアムが楽屋で、バンドのテナーサックス奏者に
「ソロが長すぎる。
もっと短くしろ。」
と告げるところは、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)が同じバンドにいたジョン・コルトレーン(John Coltrane)に言ったエピソードと同じ。
ちなみに、この時コルトレーン(John Coltrane)は
「でもどうやって終わっていいか分からないんだ。」
と答え、マイルスに
「口から楽器を離せばいいんだ。」
と言われています。
それから、スパイクリー監督の父親はジャズのミュージシャンで、母親は教師だそうです。
映画の中にも、ミュージシャンと教師の組み合わせが出てきます。
スパイクリー監督の父親は、映画の中の結婚式のシーンで、花嫁の父としてちらっと登場されているようです。
ブリーク・ギリアムが巻き込まれるトラブルと、同じようなエピソードを持つ実在のトランペッター、チェット・ベイカー(Chet Baker) については、こちらに書いています。
ベテランジャズ歌手のアビー・リンカーン(Abbey Lincoln)も、ブリークの母親リリアン役で出演しています。
アビー・リンカーン(Abbey Lincoln)について、詳しいことはこちらに書きました。
若い時のデンゼル・ワシントンがいい!
そしてデンゼル・ワシントン!
彼が若い時の作品ですが、とてもいい!
デンゼル・ワシントンが演じる、主人公のブリーク・ギリアムは、天才トランペーッター。
自己中心的で身勝手な男です。
女性も二股かけてます。
それをデンゼル・ワシントンが演じるから、嫌なやつなのにかっこ良いい!
ジャズとラブストーリー、そして友情
自堕落な生活を送っていてもトランペットの練習は欠かさなかったり、遊びで付き合っている女性にふざけて唇をかまれると「商売道具だ!」と怒ったり。
マネージャーが幼馴染だったり、この幼馴染がギャンブルでマフィアに借金していたり、と当時のジャズ界にありそうな話。
でもジャズにつきものの、麻薬や人種差別、破滅的な生活にフォーカスした、重苦しい暗い映画ではありません。
ジャズとラブストーリー、そして幼馴染やバンド仲間との友情などが中心。
さらっと、でもじっくりと大人が楽しめる映画といった感じです。
映画で流れるジャズがいい!
ブランフォード・マルサリス(Branford Marsalis)とテレンス・ブランチャード(Terence Blanchard)がこの音楽を担当。
この映画のために書き下ろされた「モ・ベター・ブルース(Mo’ better blues)」は、もうスタンダート曲になった?と思うくらいカヴァーされています。
しっとりと歌い上げるこの曲も素敵。
そのほかにも、映画の中で流れる曲がいい感じです。
ジャズの名曲の数々が流れます。
ジョン・コルトレーン(John Coltrane)のファンであるスパイク・リー監督は、「至上の愛(Love Spreme)」を映画で使用しました。
この曲が使われているシーンが、またいいんです。
とにかくジャズに浸れる、大人の恋に浸れる、そんな映画。
ブリーク・ギリアムが、1人の男として成長していくさまも、またいいです。
人間の成長を描いたドラマとしても、しみじみとした感動を味わえます。
映画に流れるジャズは、映像とあいまって、また格別。
チーズはそのままでもおいしいけど、ワインがあるともっとおいしくなります。
映画とジャズは、チーズとワインのような関係だと思います。