ひと昔前はアメリカのジャズ系ミュージシャンで日本人女性と結婚している人が、結構多くいました。
(今も若干いるかも)
奥さんや、元奥さんが日本人だったジャズメンをあげると、
アートブレイキー(Art Blakey)、エルビン・ジョーンズ(Elvin Jones)、ケニー・バロン(Kenny Barron) 、マッコイ・ターナー(McCoy Tyner)、リー・モーガン( Lee Morgan ただし奥様は日本生まれでなくて日系)、ケニー・バレル(Kenny Burrell)、ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)、ルイス・ナッシュ(Lewis Nash)、ピーター・アースキン(Peter Erskine)、スコット ハミルトン (Scott Hamilton)、マル・ウォルドロン(Mal Waldron)、パット・マルティーノ(Pat Martino)…..
ルー・タバキン(Lew Tabackin)さんの奥様は穐好敏子さんなので、職場結婚というところが違いますが、日本女性と結婚したアメリカのジャズメンという点では合致。
奥様にちなんだ曲を作った人も少なくないし、エルビン・ジョーンズ(Elvin Jones)にいたっては日本人女性と交際中?結婚中?に長崎の佐世保に住んでました。
名前は忘れましたが、ある有名ベーシストも日本女性を追いかけてきて、しばらく大阪に住んでいたという噂を聞いたこともあります。
結婚はしていないけど、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)も日本女性とのロマンスがあったようです。
ひと昔前のジャズメンはなぜ、こんなに日本人女性が好きなのか。
リー・モーガンが日本人と結婚した先駆け
日本女性と結婚したジャズメンの先駆けは、天才トランぺッターのリー・モーガン(Lee Morgan)。
リー・モーガンの元奥様のKiko Yamamotoは、カリフォルニアに生まれの日系二世。
10代のときにスカウトされてモデルになったKikoは、ジャズファンでジャズスポットにもよく出入りしていました。
美しいKikoはリー・モーガンの目に留まり、リー・モーガンとマイルス・デイヴィス(Miles Davis)と一緒にKikoの友人も誘って、ホテルのラウンジで合コンをしたのだとか。
すぐにリー・モーガンとKikoは恋に落ち、リー・モーガンがジャズメッセンジャーの仕事で多忙を極める中、あいまをぬって結婚しました。
新郎の介添え人をピアニストのボビー・ティモンズ(Bobby Timmons)が勤め、リー・モーガンが出演中だったジャズクラブ、バードランド(Birdland)で披露宴をおこないました。
しかしながら当時は人種差別が激しかった時代に加えて、アフリカ系と日系という異なる人種の結婚式は家族の反対もあり、新郎新婦ともに両親は立ち会いませんでした。
そして、このKikoとリー・モーガンの結婚生活に、まわりのジャズメンが衝撃を受けます。
日系といえども亭主関白な家庭に育ったKikoなので、普通にご主人リー・モーガンの世話を焼いたようなんですが、これにアメリカのジャズメンは驚きます。
麻薬におぼれてボロボロになっていくリー・モーガンを見捨てず、尽くしたこともジャズメンには
「えっ、まじ。いいなあ!」
という感じだったようです。
そしてジャズメンの間で、日本女性と交際したり結婚したりすることが、クール(Cool)なことになったそうです。
でもリー・モーガンは後にKikoと別れて、年上の、のちにリー・モーガンを拳銃で撃って死亡させるヘレンと一緒になりますが。
でもKikoさんとは離婚はしてなくて、籍は入ったままだったそうです。
アメリカのジャズメンが日本人女性と結婚する主な理由
今は状況がまた違うと思いますが、ひと昔前の話です。
ナイト(騎士)からお殿様になれる!(騎士よりお殿様のほうがラク)
コロンブスがアメリカ大陸を発見して、ヨーロッパからの移民がアメリカ大陸に押し寄せ、先住民のインディアンを押しのけ、アメリカを開拓して定住したというのがアメリカの歴史です。
なのでヨーロッパほどではないにしても、ナイト(騎士)の精神がアメリカには残っていて、女性をお姫様扱いして大切にする風潮が、根底に少しは残ってます。
アメリカは表向きはレディファースト、女性を大切にするのがマナーとなってます。
(水面下では男尊女卑もあるらしいです)
でも売れっ子ジャズメンほど、ツアーで家を留守にすることが多く、練習時間やレコーディングなど長時間家を不在にるすことが多いので、彼女や奥さんに割く時間が圧倒的に少ない。
お姫様扱いされない彼女や奥さんは不満を持つし、文句も言う。
その点、ひと昔前の日本女性は基本的に夫や彼氏に尽くすので、ジャズメンはお殿様扱いしてもらえます。
日本人女性は1人で過ごすことをそんなに厭わない
基本的にジャズメンはツアーや、レコーディングなどで不在が多い。
アメリカはカップルの文化で、外出や、行事、パーティーへの参加も基本的にカップルですが、不在がちなジャズメンの彼氏や夫だと、奥様や彼女は1人で過ごすことが多くなります。
留守番の孤独に耐えられなくてアメリカの女性は他の男性に走る、もちろんすべてのアメリカの女性がそうではなくて、ちゃんと留守番している人もいるけど。。。。とニューヨーク在住でジャズシーンに詳しいかたがおっしゃってました。
日本はもとからカップル単位の文化ではないので、1人でいることに抵抗を感じない人が多いし、1人での留守番のさみしさにも強いんじゃないかということです。
ツアーなどで不在がちで、たまに帰ってくるジャズメンを、文句も言わず家で留守番しているのが日本人女性なんだそうです。
最近はアメリカでも、アフリカ系と白人のカップルも見かけるようにはなりましたが、でもやっぱり圧倒的に数は少ないように思いますし、2002年にニューヨークに行ったときには、白人だらけの店、アフリカ系だらけの店と、客層も別れていました。
(スノッブなお店ならそんなことはないかもしれませんが)
ニューヨーク在住のかたに聞いたら、アフリカ系の人も入れるけど居心地が悪い店というのが結構あって、もとからアフリカ系の人たちはそういう店には入らないとおっしゃってました。
日本人はアフリカ系に対して差別意識がないので(日本にやってきたマイルス・デイヴィスやアート・ブレーキーが日本人が差別しないことに驚いたくらい)、そんなことも日本人と結婚するジャズメンが多い理由かなあと思ったりもします。
あくまで、ひと昔前の話ですし、私の推測です。
あと、昔のまだ日本人が珍しかったころは、オリエンタルでエキゾチックがおしゃれ、な感じの風潮がヨーロッパやアメリカにあって、日本人の雰囲気がオリエンタルでエキゾチックでおしゃれと受け止められることもあったようです。
個人的には、留守がちで女性にモテるジャズメンの奥さんは大変だろうなあと思っているので、ジャズメンとの結婚生活を続けるのはより多くの忍耐が必要なことが多いんじゃないかと思ってます。