メル・トーメ(Mel Torme 1925年~1999年)。
ジャズ歌手としてのみならず、ドラムも演奏し、俳優として映像でも活躍。
ボブ・ウェルスとの共作「ザ・クリスマス・ソング(The Christmas Song)」では作曲家としての才能も発揮。
今でも歌い継がれる「ザ・クリスマス・ソング(The Christmas Song)」のバースから歌うバージョン。
あたたかく、ソフトな歌声は「ベルベットの霧」とも評されました。
ただメル・トーメ自身はジャズ志向が強かったので、ポップス歌手を形容したような「ベルベットの霧」という言い方は、好ましく思っていなかったようです。
いいと思うんだけどなあ。
メル・トーメの生涯
メル・トーメの生い立ち
イリノイ州シカゴ生まれ。
若干4歳で、レストランにてオーケストラをバックに歌い、プロ歌手としてスタートしたといわています。
1942年~43年には、バンドのドラマー兼歌手として活動。
一時軍隊に入りますが、1946年には除隊。
ソロ歌手としての活動を再開するとともに、映画、ラジオ、テレビと活躍の場を広げていきました。
ちなみに息子さんのジェームス・トーメ(James Torme)もジャズシンガー。
お父さんがヒットさせたR&Bの曲も歌ってます。
ちょっと声が似ているような気が。
こちらはお父さんのメル・トーメのほう
。声は息子さんと似てますが、フレージングやリズム感は、お父さんのメル・トーメに軍配が上がりそうです。
メル・トーメの名唱&名曲
個人的には、若いときの細かいビブラート全開なメル・トーメより、かっぷくのよいおじさんになってからの太い声になったメル・トーメのほうが好みです。
一番のお気に入りは、ジョージ・シアリング(George Shearing)のピアノで歌うメル・トーメ。
ジョージ・シアリングのスイングのノリが、メル・トーメと合うのでしょうか。
息もぴったり。
2人の録音はいくつも残されています。
メル・トーメはスキャットもすごいのですが、こんなふうに切々と歌い上げるバラードもいいんです。
こういう、華やかな、いかにもジャズっていう曲も、メル・トーメは得意な感じ。
ナットキング・コールが朗々と歌う「イッツ・オンリー・ア・ペーパームーン(It’s Only A Paper Moon)」も好きですが、よりスイングさせて歌うメル・トーメのバージョンも好きです。
メル・トーメのスキャットが素敵。
メル・トーメのソフトな歌声をより楽しめるのが、スローで歌われる「ザッツ・オール(That’s All)」
「バークリー・スクエアのナイチンゲール( A Nightingale Sang In Berkeley Square)のメル・トーメの歌には聞きほれてしまいます。
ちなみにドナルド・フェイゲンのヒット曲「雨に歩けば(Walk Between the Raindrops)」も、メル・トーメはジャズテイストで歌っていて、それもかっこよいです。
メル・トーメはポップス歌手のような、親しみやすいソフトな声を持ちながら、自由自在なスキャットやリズム感抜群のスイングなど、ジャズ歌手としてのテクニックに優れた、職人技のジャズシンガーだと思います。
いい意味で、いつも安定したレベルの歌を聴かせてくれる感じ。
年を重ねてからの円熟味を増したメル・トーメの歌は、夜に聞くと、ゆったりとした気分にしてくれます。