ハービー・ハンコックのドキュメンタリー映画「ポシビリティーズ」

「ハービー・ハンコック ポシビリティーズ(Herbie Hancock Possibilities)」は、ジャズ界の大御所ハービー・ハンコックが2005年に発売したアルバム「ポシビリティーズ (Possibilities)」のレコーディングのようすを記録したドキュメンタリー映画です。

「ポシビリティーズ(Possibilities)」は、ジャズの分野にとどまらず、ポップス、ロックとジャンルを超えた、ミュージシャンたちとハービー・ハンコックが作りあげたアルバム。

参加ミュージシャンは、カルロス・サンタナ(Carlos Santana)、クリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)、スティング(Sting)、ジョン・メイヤー(John Mayer)、ポール・サイモン(Paul Simon)、アニー・レノックス(Annie Lennox)、ラウル・ミドン(Raul Midon)など、そうそうたる超豪華メンバー。

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ラウド・ミドンの下積み時代を偶然見た!(【注意】自慢話です)

「ポシビリティーズ (Possibilities)」に出演している、ラウド・ミドン(Raul Midon)については自慢話があります。

私は偶然、彼の下積み時代のライブを、生で見ました!

2002年の夏にニューヨークに旅行で行ったとき、たまたまニューヨーク在住の人に連れて行ってもらったお店に、ラウド・ミドンが出演していました。

その店はノーチャージのカジュアルなお店で、しかもメインのバンド(アースやジェームス・ブラウンのコピーバンド)のステージの合間に、ラウド・ミドンが出ていて彼はメインじゃありませんでした。

でも1人でフラメンコギターのようにギターをかき鳴らしながら歌う彼のスタイルや、トランペットそっくりのスキャットはそのころからされてて、とにかくびっくり。

「こんなすごい人が、ノーチャージのお店に出演してるの⁉

しかもメインのバンドの休憩中に⁉

ニューヨーク、おそるべし!!」

と思ってたら、何年かしてCD屋さんで彼のCDを見つけて

「メジャーデビューしたんや!

そりゃそうだ!

こんなすごいアーティスト、世に出てよかった!!!」

と我がことのように嬉しく興奮しました。

「ポシビリティーズ(Possibilities)」の内容

「ハービー・ハンコック ポシビリティーズ(Herbie Hancock Possibilities)」では、このそうそうたるミュージシャンたちとハービー・ハンコックのレコーディングでの打ち合わせのやり取り、録音風景などを見ることができます。

「あの曲は、こんなふうに作り上げられて、録音されたのか」

と録音風景を垣間見れる、ファンにはたまらない映画です。

「ポシビリティーズ(Possibilities)」はDVDも出てます

「ハービー・ハンコック ポシビリティーズ(Herbie Hancock Possibilities)」はDVDも出てます。

(※日本語字幕があるかどうかは未確認です)

ハービー・ハンコックが今も第一線で活躍し続けている理由がわかる

映像では、常に新しいものを作りたい!というハービー・ハンコックの姿勢が濃厚に出ています。

いくら売れたからといって、今までと同じようなものを作っていては意味がないという彼の主張も。

そして感動したのが、これだけの大御所にも関わらずハービー・ハンコックがちっとも偉ぶらず、共演者のアイディアや希望などを、素直に受け入れ試してみること。

お互いに影響し合わないと、意味がないというような。

ジャズのセッションなんかだと、よく偉そうに他の参加者に意見するアマチュアミュージシャンを見かけたりしますが、ハービー・ハンコックの爪のアカを飲ませてやりたり(笑)

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「ポシビリティーズ(Possibilities)」でプロフェッショナルとは何かを学ぶ

ジャズファンなら、見ていて感動するシーンがいくつもあると思います。

私はアニー・レノックス(Annie Lennoxとハービー・ハンコックが歌詞の内容について、

「こんな意味があるんじゃないか」

と話し合い、最後には作詞者に電話して歌詞の内容を確認していたシーン。

そこまでするんだ!と驚いたのと、その確認をする前と後では、微妙にアニー・レノックスの歌い方が変わった気がしました。

これぞプロフェッショナル!

アニー・レノックスと言えば、私が高校生のときには、ユーリズ・ミックス(Eurythmics)で大活躍。

数々のヒット曲が懐かしい。

アニー・レノックスは最近でも映画「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ(Fifty Shades of Grey)」にその歌が使われたり、ジャズも歌ったりしているようです。

ビリー・ホリディ(Billie Holiday)の「ストレンジ・フルーツ(Strange Fruit)」も歌っていて、なかなかの雰囲気です。

マイルスファンなら思わずにんまり。あのエピソードが出てくる

他にも、ハービー・ハンコックが共演者に

「マイルスに『バターノートを弾くな』って言われたんだ」

と話していた、シーンでは

「ああ、例の話ね」

とにんまりしてしまいました。

これはハービー・ハンコックの自伝に書かれているのですが、コンサートの本番中にピアノを弾いているハービー・ハンコックの耳元にマイルス・デイヴィスがが

「バターノート(ノートは音の意味)を弾くな」

とささやいた話。

マイルスは、そんなふうによく独特の比喩を用いて、若手にアドバイスしていたので、ハービー・ハンコックはこのときも「バターノート」は何かの比喩だと思ったそうです。

後でゆっくり検討したら

「ボトムノートを弾くな」

の聞き間違えだったかもしれないとのことですが、そのときのハービー・ハンコックは、

「バターノートってなんだ?」

と必死に考え、バター=ベタっとした音=ありきたりな退屈な音=マイナーかメジャーかを分ける決めてになるサードとセブンスの音か?と推理。

サードとセブンスの音を抜いて弾いたそうです。

マイナーとセブンスの決め手となる、サードとセブンスの音を弾かないことによって、より自由にアドリブを展開できたのだとか。

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他にも、見どころ満載。

ミュージシャンが変わると、やり取りも、やり方も変わるところもおもしろい。

中には、ちょっと頑固にこだわる人もいたりして(笑)

ハービー・ハンコックが、持ち込まれたアイディアを一瞬考えて

「やってみよう」

とトライするかと思えば、今までと似たようなものは作りたくないという信条は曲げないシーンもあったり。

ジャズファンのみならず、音楽が好きな人なら、音楽が誕生する過程が見れて、お得な気分になるかも。

映画「ポシビリティーズ(Possibilities)」を見た後で、「ポシビリティーズ (Possibilities)」をもう一度聴き直すと、また違った感じに聴こえると思います。

 

ちなみに同じタイトル「ポシビリティーズ(Possibilities)」の本が出ていて、こちらはハービー・ハンコックの自叙伝となってます。

こちらは原書。

日本語版はこちら。

 「ポシビリティーズ(Possibilities)」の本は、まだ最後まで読んでないのですが、若くしてハービー・ハンコックが「ウォーターメロン・マン(WaterMelon man)」のヒットで得たお金で、高いスーパーカーを現金で買っちゃうくだりや、そのスポーツカーでマイルス・デイヴィスと競争しちゃうくだりなど、おもしろい場面がたくさんありました。

こちらもおすすめです。

(まだ最後まで読んでないけど(笑))