ジャズシンガー、サラ・ヴォーン(Sarah Vaughan 1924年~ 1990年)の声は管楽器のようだとよく言われます。
サラ・ヴォーンは、若いころにビリー・エクスタイン(Billy Eckstine)のバンドに参加していました。
同じ時期にそのバンドに所属していたチャーリー・パーカー(Charlie Parker) や、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)の演奏を聴いたサラ・ヴォーンは、彼らの演奏を自分の歌に取り入れ、ホーンのような声で歌うスタイルが出来上がったと言われています。
マイルス・デイヴィス(Miles Davis)も自叙伝の中で、サラ・ヴォーンについてはホーンのような声で歌う「偉大な歌手だ」と言及しています。
私も大好きなシンガーの1人です。
マイルス・ディヴィスの自叙伝についてはこちら。
サラ・ヴォーンの名盤
今回は、私の独断と偏見でサラ・ヴォーンの名盤を4枚選びました。
サラ・ヴォーンのアルバムは何枚も持っているし、所有している以外のアルバムも聴きましたが、この4枚はその中でも特にお気に入りで、もう何回聴いたかわからないくらい聴いているものです。
クレイジー・アンド・ミックスド・アップ(Crazy and Mixed Up)1981年
数あるサラ・ヴォーンのアルバムの中でも、間違いなく、この「クレイジー・アンド・ミックスド・
たぶん、そう言う人はたくさんいると思います。
とにかく、サラのボーカルがすごい!
「時さえ忘れて(I didn’t know what time it was)」を歌っている人は多いですが、このアルバムのサラの歌を超える人はいないと思っていますし、アップテンポの「枯葉(Autumn Leaves)」なんてしょっぱなから超高速のスキャットで自由に音を行き来します。
私はエラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)の「ハウ・ハイ・ザ・ムーン(How High The Moon)」のスキャットと、このアルバムの「枯葉(Autumn Leaves)」のサラのスキャットが、最高峰のスキャットだと思っています。
歌以外でも、ピアノのローランド・ハナ(Roland Hanna)をはじめミュージシャンたちがサラの歌のバックで、最高に洒落た、繊細なお仕事をしていて、歌だけでなく演奏にも文句のつけようがありません。
通常、完成度が高い演奏ってどこか四角四面で整い過ぎていて面白みがなかったりするものですが、このアルバムは完成度の高い歌と演奏でありながら、スリリングさや力強いグルーブも感じられて、とにかく最高です。
初めてこのアルバムを聴いた後は、他のヴォーカルは何を聴いても生ぬるく感じてしまって困りました。
(↓Spotifyに登録すれば(無料でも可)フル再生できます)
メンバーは、ヴォーカルのサラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)、ピアノのローランド・ハナ(Roland Hanna)、ギターのジョー・パス(Joe Pass)、ベースのアンディ・シンプキンス(Andy Simpkins)、ドラムのハロルド・ジョーンズ(Harold Jones)
アフター・アワーズ(After Hours)1961年
全体的に、リラックス感がただようアルバム。
サラ・ヴォーンが仲間たちと、自分たちが楽しむために演奏しているような感じです。
サラ・ヴォーンも肩の力を抜いて、サラっと歌っています(←ダジャレじゃありません(笑))。
ギターとベースとサラ・ヴォーンという組み合わせで、ドラムはなし。
全体的にひっそりとした感じが漂い、静かにアルコールを傾けながら聴くのにぴったりなアルバムです。
「サラ・ヴォーンの歌は、重たくてちょっと苦手」
というような人には、ぜひおすすめの1枚。
個人的には、スローバラードで歌う「マイ・フェイヴァリット・シングス(My Favorite Things)」が、何か悲しいことがあって涙をこらえるためにお気に入りのものを数え上げていく感じで、大好きなバージョンです。
メンバーは、ヴォーカルのサラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)、ギターのマンデル・ロウ(Mundell Lowe)、ベースのジョージ・デュヴィヴィエ(George Duvivier)
アット・ミスター・ケリーズ(At Mister Kelly’s)1957年
大阪の梅田にも「ミスター・ケリーズ(Mister Kelly’s)」という老舗のジャズクラブがありますが、ミスター・ケリーズ(Mister Kelly’s)の本家本元はアメリカのシカゴにあるジャズクラブで、大阪の梅田のお店はシカゴのお店とライセンス契約を結んだお店になります。
このアルバムは、その本家本元のシカゴにあるミスター・ケリーズ(Mister Kelly’s)でのライブを収録したもの。
お客さんの笑い声や、ハプニングでマイクが倒れる音など、あたかもジャズクラブでサラ・ヴォーンを聴いているかのような臨場感と、そのあと即興で歌詞を変えて歌うサービス精神あふれるサラ・ヴォーンの魅力を味わえます。
メンバーは、ヴォーカルのサラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)、ピアノのジミー・ジョーンズ(Jimmy Jones)、ベースの リチャード・ディヴィス(Richard Davis)、ドラムのロイ・ヘインズ(Roy Haynes)
サッシー・シングス・ザ・チボリ(Sassy Swings the Tivoli)1963年
デンマークの首都コペンハーゲンのチボリ公園のコンサートホールで、1963年7月に4日間にわたっておこなわれたコンサートのライブ盤で、プロデューサーはクインシージョーンズ(Quincy Jones)。
これが結構ノリノリにスイングしていて、バラードは声量も声の伸びもよくて、絶好調なサラ・ヴォーンです。
ここまでノリノリにスイングしているサラ・ヴォーンは珍しいように思います。
4日間のライブ盤で、曲目が多いところもお得感あり。
メンバーは、ヴォーカルのサラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)、ピアノは「ミスティ(Misty)」で合間にコミカルながらなかなかの歌声を聴かせているカーク・スチュアート(Kirk Stuart)、ベースのチャールズ・ウィリアムス(Charles Williams)、ドラムのジュージ・ヒューズ(George Hughes)
その他、スキャットのイントロから入る有名なバージョンの「ララバイ・オブ・バードランド(Lullaby of Birdland)」を収録した「サラ・ヴォーン・ウィズ・クリフォード・ブラウン(Sarah Vaughan with Clifford Brown)1954年」も有名です。
今でも、セッションなんかで、「ララバイ・オブ・バードランド(Lullaby of Birdland)」を、スキャットのイントロとエンディングで歌うヴォーカルさんは多いように思います。
そのくらい普及している超有名バージョン。
みんなが、サラのバージョンで歌う「ララバイ・オブ・バードランド(Lullaby of Birdland)」
サラ・ヴォーンの生い立ちや、その生涯についてはこちらに書きました。