「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」のビリーの強さ

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この映画を見て、なぜビリー・ホリディの歌がこんなに胸に響くのか納得しました。

ビリー・ホリディのファンなら絶対見るべき。

そうでなくても、ぜひぜひたくさんの人に見てほしいと思いました。

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「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」を見て、長年私が持っていたビリーの印象も少し変わりました。

悲惨な境遇で育った子供時代、過酷な人生、アフリカ系アメリカ人への容赦ない差別。

そんな中で麻薬に手を出し、若くして亡くなったという事実はそのままですが。

ビリーがこんなに、強い信念の人だったとは。

自伝「奇妙な果実」でも気の強さはうかがえましたが、この映画ではビリーはアメリカ政府を相手に闘います。

政府に屈することなく、自分の意志をつらぬきます。

ビリーにそんな強さがあったなんて、うれしい驚きでした。

私はアマゾンプライムで見ました。

(2022年8月現在の情報です。配信状況が変わることがあるので公式ホームページなどでご確認ください)

ビリー・ホリディを描いた映画では1972年にダイアナ・ロスが主演した「ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実」という映画もありました。

ダイアナ・ロス版のほうはどちらかというとビリー・ホリディの悲しさ、苦しみをえがきながら、彼女とかかわった男たちとのラブロマンスに重きを置いた感じ。

そのため史実ではロクな男たちじゃなかったようですが、結構いい男として登場していました。

今回ご紹介する「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」では、男たちは史実に忠実?にロクでもない男たちが登場します。

中にはロクでもある男も登場しますが。

「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」はアンドラ・デイが主演。

最近の音楽事情にとんとうといのですが、映画の公式ホームページによるとスティーヴィー・ワンダーの奥さまに見いだされたシンガーなのだとか。

この映画に主演するまで、演技の経験はなかったというのが信じられないくらいの熱演でした。

そしてこの役のために74キロから56キロまで減量したのだそうです。

痩せていないビリー・ホリディでは説得力がないとはいえ、歌手なのにこの俳優魂は尊敬します。

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そして歌もビリーにそっくり。

ビリーファンとしても申し分なし。

「All of me」「Lady sings the blues」「Them there eyes」「Ain’t nobody’s business」などビリーおなじみの曲が流れるだけでも、ファンとしてはテンションが上がります。

もちろん、かの有名曲「奇妙な果実(Strange Fruit)」も。

そしてこの「奇妙な果実(Strange Fruit)」がFBIを怒らせることになります。

公民権運動がさかんだったころとはいえ、まだまだ人種差別が激しく、ただでさえ成功したアフリカ系アメリカ人は腹立たしい存在。

そこにリンチを受け亡くなったアフリカ系アメリカ人を描いた歌を歌ったのですから、彼らはビリーを許しません。

アフリカ系アメリカ人の権利を主張する、公民権運動を擁護するような「奇妙な果実(Strange Fruit)」を、FBIやアメリカ政府が許すはずがありません。

あの手この手で、執拗にビリーを追い詰めます。

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ビリーについては麻薬にむしばまれる弱い面が前面に出されることが多かったように思いますが、この「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」でのビリー・ホリディの信念の強さ、「奇妙な果実(Strange Fruit)」への思いの強さが前面に出されているように思います。

この映画でのビリー・ホリディは強いです。

今まで弱く描かれることが多かったように思いますが、この映画で強いビリーに出会えて、ビリーファンとしてはうれしかったです。

そしてFBIにも屈しない信念の強さで歌う歌が、私たちの胸を打たないはずがありません。

ビリーの歌の魅力は、この信念の強さにあったんだと思いました。

映画のラストでクレジットが流れた後に、また歌とダンスがあるのでそこも見逃さないでください。

悲しいラストですが(そしてラストでFBIが亡くなったビリーにしたことも、そんなことする?政府の人間が?とあきれましたが)このラストのダンスを見ると天国で穏やかに過ごしているビリー・ホリデイを想像して、少し悲しさと、理不尽さに対する腹立たしさが慰められます。

とはいえ映画の最後にありますが、2020年にリンチに関する法案がアメリカの議会に提出されましたが、却下されたそうです。

ビリー・ホリディの悲しみはまだ続くようです。。。。

アメリカだけじゃなく、たぶん世界のあちこちで。。。。

ビリー・ホリディの自伝「奇妙な果実」については、こちらに書きました。

自伝「奇妙な果実」でビリー・ホリデイの胸のうちを読む
ビリー・ホリディの自伝「奇妙な果実」という本の紹介です。ばりばりのジャンキーだったビリーが自分の生い立ちを語っているので、誇張や妄想、事実と違うなど、賛否両論ありますが、それをさしい弾いても、読む価値は絶対あり!と思っています。

ビリー・ホリディについては、こちらに書きました。

過酷な生涯と胸を打つ歌 ビリー・ホリデイ
ビリー・ホリデイ(Billie Holiday 1915年~1959年)。私生児として若い母親のもとに生まれ、若いときには売春で逮捕。歌手になってからも深刻な薬物中毒とアルコール中毒で、やせおとろえ、しゃがれた声になったにもかかわらず、その歌は輝きを失いませんでした。

ダイアナ・ロスがビリー・ホリディを演じた映画「ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実」については、こちらに書きました。

ダイアナ・ロスの歌うジャズが最高!映画「ビリー・ホリデイ物語」
1972年公開、ダイアナ・ロスがビリー・ホリデイを演じた映画「「ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実」、(原題は「Lady Sings the Blues」)について紹介しています。美しく、悲しく、せつなく、そして良質のジャズに包まれた、とてもよい映画です。

ビリー・ホリディの名盤についてはこちら。

聴き手の心を揺さぶるジャズヴォーカル ビリー・ホリディの名盤
悲劇的な生涯を送ったジャズシンガー、ビリー・ホリデイ(Billie Holiday 1915年~1959年)の歌は、麻薬やアルコールにむしばまれしゃがれ声になっても、感動的で心を打つ、味わい深いジャズです。

ビリー・ホリディの名曲についてはこちら。

聞けば聞くほど深い味わい ビリー・ホリデイが歌うジャズの名曲
聞けば聞くほど味わいが増すビリー・ホリデイ(Billie Holiday 1915年~1959年)の名曲、有名な曲、おすすめな曲のご紹介です。ビリーの自作、共作、ビリーのために作られた曲など。