ジャズセッションに20年以上通って楽しんできた私が学んだ、ジャズセッションにおける暗黙のルールなどをご紹介します。
これを読んだら勇気を出して、ジャズセッションに行ってみてください。
最初はうまくいかなくて落ち込むかもしれませんが(私がそうでした!)回数こなせば、楽しくなります!
セッションに参加する前の準備や、必要と思われる演奏のレベルなど。
ボーカルさんがセッションに参加するときに、特に注意したほうがよいことはこちら。
特にこの暗黙のルールを破ったからといってペナルティが課されることはありません。
でも知っておくと役に立つと思います。
曲のコールの仕方は店それぞれ
お店に入ったらカウンターに置いてある用紙にやりたい曲を書いたり、席に着いたら渡されるメモに曲名を書いたり。
曲のコールや楽器の申請は店それぞれです。
初めて行くお店だったら、入店したときや、注文を取りに来た店員さんに
「セッションに参加したいんですけど」
と伝えたら大丈夫だと思います。
(たぶん店員さんのほうから
「セッションに参加しますか?」
と聞いてくれると思います)
自信がなければ、参加せず見るだけでも大丈夫です。
「今日は参加せず、見学だけです」
と店員さんに伝えておけば、お店によってはミュージックチャージが参加者より少し安くなる場合もあります。
演奏はお店に入った順番で(遅く行くと1回しか演奏できないことも)
演奏する順番はお店に入った人から順番に回ってきますが、ときには楽器同士の組み合わせによって順番が前後することもあります。
たいていのセッションでは1stに1回、その後少し休憩をはさんで2ndで1回と2回演奏できることが多いですが、参加者が多いときなどは遅く行くと1回しか演奏できないこともあります。
(お店の配慮で、遅く行っても2回演奏させてもらえることもあります)
逆に参加人数が少なければ2回以上演奏できることもあります。
演奏者の組み合わせはお店の人が組む
参加者がかたよらないように、お店のかたがうまく組み合わせてくれます。
「あのギターと一緒に演奏したい」
「これは管楽器も参加してほしいなあ」
という希望があればお店の人にあらかじめ伝えておくと、もしかしたら希望が通るかもしれません。
でもお店のかたは、たくさんの参加者が均等に演奏できるように頭を悩ませておられるので、希望が通ればラッキーくらいの感じが良いかと思います。
ドラマーはスネアやシンバルの高さを勝手に調節しない
ドラマーさんはお店に置いてあるドラムのシンバルやスネアなどの高さを自分に合うように調節したいところですが、それはご法度のようです。
以前、セッション参加者のドラマーが曲が始まる前にスネアの高さを調節しようとして、ホストに注意されていました。
限られた時間内でできるだけ多くの人が演奏できるように時間を節約するため、ドラマーが変わるたびに調節していたらお店の楽器が破損したり傷んだりする可能性が高いため(お店のドラムはお店所有のものか、あるいは誰かの所有している楽器を借りているケースなどがあります)などの理由かなと思います。
そういえば、ジャズセッションに参加するドラマーさんたちは身長の高低にかかわらず、いつもシンバルやスネアの高さを調節しません。
私が調節しているのを見たのも、その1回限りです。
黙認しているお店もあるかもしれませんが、ホストやお店の人、他の参加者には苦々しく思われている可能性もあるので注意したほうがよいかと思います。
どうしても調節したいときはホストミュージシャンやお店の人に、調節してもよいか聞いてみたほうが無難かも。
演奏者がバラバラならフロントに合わせるのが基本だけど。。。。
演奏者がそれぞれテンポがバラバラだったり、誰かが間違えて小節を飛ばしてずれが発生したときなどは、基本的にはフロントに合わせます。
フロントとはテーマのメロディーラインを演奏、または歌う人のことです。
ただセッションはアマチュアの集まりなので、フロントがテンポや小節を把握してみなを引っ張っていけないときも多々あります。
そんなときはよく聞きながら、一番把握していそうな人に合わせます。
ホストミュージシャンが演奏に参加しているなら、ホストに合わせるのが無難だと思います
ボーカルが多いとインスト曲をコールできないことも
ここ何年かのジャズセッションでは、お店や日によってはボーカルが多いことがあるようです。
参加者が多いうえにボーカルが多いと、楽器の奏者はインスト曲が演奏できず、ボーカルの歌伴で終わることもあります。
お店によっても違いますが、全員参加させようと思うとそうなるようです。
お店によっては、ボーカルセッションの日を別に作っているところもあります。
そういうお店のセッションならボーカルが少ない可能性もあります。
自分の番が来たら
1.楽器を持ってステージに上がり、演奏者全員に譜面をわたします。
皆がよく知っている曲でインスト曲なら譜面が不要のときもあります。
ボーカルは自分のキーの譜面をわたします。
限られた時間でたくさんの人で曲を回すため、待っている間に譜面なども準備してすぐに出られるようにしておきます。
2.スイング、バラード、ラテン、ボサノバ、ワルツなどリズムを共演者に伝えます。
全員に伝えられないときは、最低でもピアノとドラムに伝えます。
もし共演者がうまい人たちなら、ピアノさんだけに伝えてもOKです。
プロやうまい人たちなら、ピアノさんが弾くイントロの4小節で
「あ、ボサノバね」
とわかります。
超有名インスト曲なら「オリジナルどおりに」「マイルスのバージョンで」などでもいいときもあります。
もしエンディングがわかってもらえるか不安なときは、ここで
「エンディングは逆順です」
「最後まで演奏したら最後の4小節を2回繰り返して」
などと伝えておきます。
この「繰り返し」については受け取りの相違があるので、次の「繰り返し」について書いた項目を必ず読んでください。
エンディングについては譜面に書いてあるなら
「エンディングは譜面どおりにお願いします」
と伝えておくのも手です。
3.テンポを伝えます。
たいていの曲はピアノのイントロから入るのでピアノに伝えればOKなのですが、全員アマチュアなので、全員にわかるようにしてもよいと思います。
テンポだしは、念のため小さな声でテーマを口ずさみながらミディアムスイングなら2拍目と4拍目を指で鳴らす、バラードやボサノバ、ラテンは1拍目,2拍目,3拍目,4拍目,と指で鳴らすなり、手を打つなり、なんなりして伝えます。
テンポだしの方法は、他の上手な人たちがどうしているか、観察して真似してください。
エンディングの「繰り返し」の受け取りが違うので注意
例えばエンディングについて伝えるときに
「エンディングは最後の4小節を2回繰り返してください」
と伝えても、最後まで演奏してからさらに最後の4小節を2回演奏するのか(最後の4小節は合計3回演奏)、最後まで演奏して最後の4小節をもう1回演奏するのか(最後の4小節は合計2回演奏)で見解が分かれます。
「エンディングは最後までいったら、もう1度最後の4小節を演奏してください」
「エンディングは最後までいったら、最後の4小節を2回演奏してください。最後の4小節は全部で3回演奏します」
などと念を入れて伝えたほうがよいです。
すでに演奏された曲は演奏できない
お店にもよるかもしれませんが、基本的にはその日のセッションですでに演奏された曲は演奏できません。
たぶん同じ曲をコールしたら
「その曲、もうやってん」
とホストに曲を変えてと言われると思います。
初心者セッションならお許しが出ることもあるかもしれませんが。
ベースがホストミュージシャンならソロはまわさない
ベースさんにもよるかもしれませんが、ベースがプロのホストミュージシャンの場合で、セッションの参加者が多くて演奏曲目が多い日は、基本的にベースソロはまわさなくてよいです。
参加者だけでソロを回したら、ベースソロなしでテーマに戻ってください。
(ピアノがホストミュージシャンのときは、気兼ねなくピアノソロをまわして大丈夫です)
ベースは他の楽器に比べて、かなり指を酷使します。
そしてセッションのときは、通常のライブと違って曲数がかなり多いときがあるので、ベースさんの指の負担がかなりなときもあります。
慣れているホストのベースさんになると、曲が始まるまえに
「ベースソロはいらんで」
とあらかじめ伝えるかたもおられます。
逆にベースが料金を払って参加しているアマチュアミュージシャンのときや、ふらっと立ち寄ったプロのミュージシャンが飛び入り参加したときなんかは、ベースソロはしっかりまわしてあげてください。
とはいえホストのベーシストだって
「今日は参加者が少ないし、この曲はベースソロを取ろうかなあ」
と思うこともあるかもしれません。
また
「他の楽器にはソロをまわすのに、ホストのベーシストにだけソロを回さないのって、感じ悪いと思われない?」
と不安に感じる参加者さんもいるかもしれません。
一番いいのは曲が始まる前や順番が来る前にさらっとホストのベーシストさんに
「ベースソロは回さないほうがいいですか?」
と聞いておけば、気が利くと思われるかも。
そしてここでアイコンタクトの重要性が出てきます。
アイコンタクトはしっかり取ろう!
前の項目で、ホストのベースさんにベースソロをまわすか、まわさないか、悩ましい感じで書きましたが、その悩ましさを解決してくれるのが、このアイコンタクト。
アイコンタクトで
「次、あなたの番ね」
とソロの順番を伝えるだけではなくて
「次、あなたの番にしようと思うけど、いける?」
とお伺いまで、できたらベストです。
長年一緒に演奏してきた気心の知れた同士のジャズのトリオだったら、あうんの呼吸でちらっと目くばせするだけでソロまわしもスムーズに回るかもしれませんが、セッションではお互いの気質も得意分野もよく知らないままで、えいやっと演奏を始めます。
この曲でソロを取れるか、取れないか。
よく知らない者同士では、そういったことがわかりません。
基本的には、自分のソロが終わる直前に(←終わりきる少し前がベスト。余裕をもってソロを回すのが理想)
「次、ソロどう?」
といった感じでアイコンタクトをおくれれば最高です。
ベースがホストミュージシャンの場合
「絶対まわすなよ」
とアイコンタクトで伝えてくる場合が多いです(笑)
演奏中のアイコンタクトは、慣れないとちょっと難しいかもしれませんが、上手な他の参加者や、プロのライブに行ったときなどに観察するといいと思います。
インストの場合、アイコンタクトなしで演奏していてもフロント→ピアノ→ベースの後でテーマに戻らなければドラムソロ→テーマという流れになりますが、管楽器やギター、ピアノなどが複数参加している場合はソロの順番は、演奏前に打ち合わせておくほうがスムーズかもしれません。
とはいえ、このアイコンタクトができない参加者はたくさんいるようなので、できなくても演奏前にソロの順番を手早く打ち合わせれば大丈夫です。
いろんな人がいるのでその心得
ジャズセッションには本当にいろんな人が参加しています。
同じジャズ好き同士なので、演奏した曲について
「あの曲、好きです」
「あの曲を演奏している、おすすめのミュージシャンの演奏を教えてもらえませんか?」
など話しかけると喜んで教えてくれたり、すぐに打ち解けて話が盛り上がることもあります。
逆に中にはめんどくさい人もいます(笑)
うんちくを言ってきたり、偉そうに注意してきたり。
もちろん親身なアドバイスや忠告などはきちんと聞くべきですが、偉ぶりたい、いばりたいだけの人もいるのでそういう人は聞き流してもよいかも(笑)
偉そうに人の演奏を批判・批評することのデメリット
「あんなのジャズじゃない」
「あの曲をあんなテンポで演奏するもんじゃない」
とセッションで人の演奏を批判・批評するかたがおられるたびに
「ジャズの歴史を知らない初心者さんなのかな?」
と思います。
ビバップやクールジャス、フリージャスなどは、その時代に
「やってはいけない」
と言われていたことをやって生まれました。
例えば、グレン・ミラーのようなビッグバンドがダンスミュージックとしてジャズを演奏していた時代では、譜面どおりに演奏するのがお約束でした。
そんな中、譜面どおりに演奏することに飽き足らなくなった若いミュージシャンたちがはじめたのがビバップです。
ビバップも最初は
「あんなのジャズじゃない」
と酷評されましたが、じき大衆に受け入れられジャズの主流となりました。
そして細かい音をちりばめるビバップが全盛の時代に、それに飽きたらなくなったミュージシャンたちがはじめたのが、コードチェンジを極力しない新しいスタイルのジャズ、クールジャズです。
このクールジャスも
「あんなのジャズじゃない」
とたたかれましたが、今でも人気です。
フリージャスも同じです。
このジャズの歴史はわりに有名なので、アマチュアでも多くの人たちが知っています。
またこの歴史を知っているからか、プロのミュージシャンが他人の演奏を批判しているのも聞いたことがありません。
一流のミュージシャンにレッスンを受けたりするとよほどのことでない限り、はっきりしたダメ出しは受けませんし
「僕(私)はこうしたほうがいいと思う」
というような言い方をされます。
「あんなのジャズじゃない。
あんなふうに演奏するべきじゃない」
と人の演奏を批判・批評しても
「ジャズをわかっている人だな」
と評価するのは、ジャズの歴史も知らない初心者さんたちだけです。
セッションに来るような人たちはたいてい知っているので
「あ、通ぶりたいのね」
と思われる危険もあると知っておいてください。
自信を持つのと威張ることは違います。
練習ではうまく演奏できたのに、セッションでは失敗したなんて日常茶飯事で、当たり前のことです。
何度か失敗して落ち込むかもしれまんせが、そこを乗り越えて通い続けると、回数を重ねるごとにどんどん楽しくなると思います。
お店によっても参加者やセッションの雰囲気が違うので、好きなお店を見つけて、ぜひぜひ通ってみてください!
ジャズセッションに参加する前の準備や、必要と思われる演奏のレベルなどについてはこちらに書きました。
さらに、ボーカルさんがセッションに参加するときに、特に注意したほうがよいと思われることについても書きました。
これを読んだら、練習してセッションに行きましょう!