過去20年以上、ジャズセッションに参加して楽しんできた私が学んだ、さまざまなこと。
今回は特にボーカルさんがジャズセッションに参加するときに、知っておいたほうがよいことをご紹介します。
実はジャズセッションには、円滑にセッションをおこなうために暗黙のルールのようなものが存在しています。
それを知らなかったからと言ってペナルティが課されることはなく
「単に知らないんだな」
と思われるだけですが、知っておくとスムーズにセッションに参加できると思います。
セッションに参加する前の準備や用意するとよいもの、心構えについてはこちらに。
ボーカルさんにも共通する事柄なので、ぜひこちらもお読みください。
実際にセッションに参加したときに、知っておいたほうがよいことについて、暗黙のルールなどはこちらに。
こちらもボーカルさんに共通の項目なので、ぜひ合わせてお読みください。
ここではボーカルさんが特に心がけるとよいと思われること、ボーカルさん特有の注意事項などを書いていきます。
これを知っておくと、セッションをより楽しめるはずです。
ボーカルは譜面持参する
最近はiRealやiPadなどもかなり普及しているので、もしかしたら手ぶらでいいお店がそろそろ出てきているかもしれませんが、ボーカルは人によってキーが違うので、基本的には譜面を用意して参加します。
自分のキーの譜面です。
アレンジなしでオーソドックスによく知られたジャズを歌うならピアノとベースの分最低2部、もし何かアレンジされたものを歌うならドラムの分も入れて最低3部。
管楽器が参加することも考えて、全部で4~5部ずつ用意しておくと安心です。
コード譜だけで参加するボーカルさんもおられますが、ソロを取るのがアマチュアミュージシャンの場合インスト曲は知っているけどボーカル曲は知らないという場合もよくあるので、メロディーにコードがついている譜面の用意をおすすめします。
知らない曲を、コード譜だけでソロ演奏するのはきついかも。
市販の譜面を自分のキーに移調します。
こちらはベースの納浩一さんが編集されているのでコードの信用性も高いです。
練習用にカラオケのCD付。
こちらは1,2とあって、たいていのジャズの曲は収録されているし、ジャズのスタンダード曲だけでなく「What’s Going On」などの超有名ポップス曲なども収録されています。
コードがちょっと怪しいという噂もありますが使えないほどではないし、男性バージョン、女性バージョンの歌詞だけでなく多くの曲のバースもあるので、ボーカリストは持っていて損のない譜面です。
セッションで歌う曲はスタンダード曲が望ましい
ホストミュージシャンはたいていプロかセミプロなので、たいていのストレートアヘッドなジャズなら演奏できると思いますが、共演するミュージシャン、例えばドラムや管楽器、ベースなどがセッション参加者だったりするので、みんなが知っているようなスタンダードなジャズ曲が望ましいです。
たまにジャズ曲でもリフがついているようなアレンジされた曲の譜面を持ってこられるボーカルさんもおられますが、たいてい共演者が四苦八苦しています(笑)
アレンジされた曲でなくスタンダードなジャズ曲を用意することをおすすめします。
他の演奏者は初見で演奏するのでソロのときの即興のしやすさの点を考えて、セッションではアレンジされてない曲で、誰でも知っているようなストレートアヘッドなジャズのスタンダード曲のほうが望ましいです。
ポップスを持ってくる人もいます。
お店によってはオッケーだったりもしますが
「ポップスはちょっと」
と断られることもあるので、セッション前にホストミュージシャンに
「この曲はオッケーですか」
と聞くといいかもしれません。
ちなみにポップスと言ってもJ-POPや日本語の曲はやめたほうがいいと思います。
参加者が自由にソロを取れる曲でないとセッションできません。
J-POPだとスケールも使えないだろうし。。。。
曲はスタンダードで、なおかつ32小節の曲を
セッションで歌う曲はスタンダードなジャズナンバーで、なおかつ32小節のものが望ましいです。
たいていのボーカル曲は32小節です。
たまに「スマイル(SMILE)」みたいに、ほとんどスタンダードナンバーになりつつあるけれども(この曲がスタンダードかどうかは賛否両論あると思いますが)32小節ではない曲があります。
たいていのミュージシャンは32小節に慣れていて、変則的な小節だとソロの小節を間違えたり、ソロがとりにくかったりもするので、避けたほうが無難です。
どうしてもやりたいときはあらかじめ共演者やホストに
「32小節じゃないけどいいですか?」
とダメもとで聞いてみてもよいかも。
お店の機材(PA)、マイクの設定は勝手にいじらない
ジャズセッションに参加していたアマチュアのボーカルのかたが
「マイクの音が大きすぎる」
と勝手にミキサーをいじろうとして、お店のかたが慌てて飛んできたことがありました。
ジャズセッションはみんなで楽しむためのものです。
「サスティンが効きすぎる」
「音量が大きすぎる」
とあなたが思っても全員がそう思っているとはかぎりません。
数々のライブを執り行ってきたお店側が設定したPAに、アマチュアのあなたがケチをつける行為ととられる恐れもあります。
もし仮にマイクのPAに関して不満があるのなら、勝手に触らずお店の人にそう伝えたほうがよいです。
いくらミキサーに詳しくて触れる人であっても、お店の機材や人の機材、楽器に触るときには一言断って触るのがマナーです。
お店に信頼されて任されている常連のかたが触ることもありますが、それは例外です。
セッションは発表会やカラオケではありません
ごくたまにですが、セッションに参加するアマチュアシンガーのかたで
「譜面にエンディングを書いているのに、あのホストのピアノさんったら譜面どおりに弾かなかった」
「あのピアニストさん、歌いにくいわあ」
とぼやいておられるかたがおられて、ひやひやします。
基本的にジャズは即興性を大切にする音楽です。
ホストがプロのピアニストさんの場合、いろんなタイプがあって
「あ、この人はジャズピアノのような伴奏じゃなくて、カラオケのような歌伴をしてほしいんだな」
と察してジャズピアノから、とにかくボーカルさんが気持ちよく歌えるピアノに(いわゆる新地などの酒場で弾かれるような、お酒の入ったお客さんが気持ちよく歌えるカラオケのような歌伴ピアノ。イントロから歌に入りやすいように、ソロから歌に入りやすいように弾いてくれる)即座に変身するピアノさんもいれば
「ここはセッションの場だから」
とどんなときでも、どんな人にも手加減なく即興性を大切にしてジャズピアノの歌伴を弾くピアノさんもいます。
セッションとはいえ、参加者はお客さんなのだから彼らが気持ちよく演奏できる(歌える)ことが第一目的と考えるか、アマチュアとはいえここはセッションで切磋琢磨する場なのだから手加減せずに演奏しようと考えるかの違いで、どちらが良いか悪いかではなく考え方の違いだと思います。
本来ジャズセッションというのはアマチュアがジャズを楽しむ場でもありますが、お互い切磋琢磨して学ぶ場でもあります。
そしてジャズにおいてはフロント(ボーカルは常にフロントです)が他の演奏者を引っ張っていくのは当たり前のこと。
エンディングに入る前の小節の最後で解決してしまう音を使わないで
「あ、エンディングにこう入るつもりだな」
と周りに音やフレーズで知らせるのが本来のフロントのお仕事です。
譜面ではエンディングは逆順となっていても、演奏や歌でエンディングに入る前に解決する音を使ってしまえば、手加減なしのホストさんなら逆順に入らず、そこで終わらせます。
ジャズにおいては、決して譜面どおりに弾くのが当たりまえではありません。
もしどうしても逆順などの希望のエンディングにもっていく自信がないなら、演奏前に遠慮がちに
「エンディングは譜面どおりでお願いします」
とお願いベースで言ってみれば、もしかしたら譜面どおりに弾いてもらえるかもしれません。
ボーカルセッション以外の日も参加OK
お店によってはボーカルセッションの日を設けているところもありますが、ボーカルセッションでない通常のセッションにもボーカルで参加できます。
逆にボーカルセッションの日に楽器の人が参加することもあります。
(お店によって違うかもしれませんが、私が知っている何軒かのお店はそうです)
ただボーカルセッションでは許してもらえたことが、お店や参加者によっては通常のセッションでは冷たい空気が流れることもあります。
ボーカルセッションは通常のセッションに比べるとちょっとだけ、初心者に優しめな雰囲気があるので、通常のセッションは厳しく感じるかもしれません。
でも最初はみんな、失敗するものです。
臆せずどんどん参加しましょう!
そして失敗したときは、後でホストの人にどうすればよかったか聞けば、たいてい喜んで教えてくれるし勉強になります。
たとえ途中で失敗しても最初からやり直しはご法度
一度イントロが演奏されてしまえば、エンディングまでノンストップです。
たとえ、イントロで入りそこなっても、テンポを間違えても、キーを間違えても、途中で止めて最初からやり直すことは、セッションではありえません。
あまりにひどくて曲が成立しないとホストの人が判断したら、止めて最初からやり直しさせてくれますが、本人の判断で止めてやり直すのはよっぽどのときだけです。
多少、イントロで入りそこなっても、テンポを間違えても、キーを間違えても、曲の中で持ち直そうと努力するのがセッションです。
もしあんまり間違えて立て直せないときには、ホストのミュージシャンにアイコンタクトするとなんとかしてもくれるかも?
ベーシストがホストの場合はソロは回す必要ありません
セッションのとき、一緒に演奏するベーシストが参加者のアマチュアミュージシャンの場合はソロを回しても(ボーカルの場合は回さなくてもOK)よいですが、ベーシストがホストミュージシャンの場合はベースソロを回す必要はありません。
ベーシストは他の楽器に比べて、指や腕を酷使します。
セッションのときはライブのときよりも演奏曲が多くなったりしがちなので、極力ホストミュージシャンにベースソロを回さないほうが親切です。
通りすがりのプロのミュージシャンが飛び入りで遊びにやってきて演奏するときなどは、ソロを回してもいいと思います。
大物気取りは、噂になるかも。。。。
たまになのですが、セッションの参加者の中にどこぞの大物歌手?といった態度のかたがおられます。
楽器奏者にもたまーにおられますが、歌手のかたに特に多いように思います。
自信過剰というか、いばっているというか。
「私、うまいでしょ?あんたたちはしょせん素人ね」
とばかりに、共演者やホストミュージシャンへのリスペクトも感じられず見下している感じ。
そういう人はセッション仲間の間で
「あ~ぁ、このあいだ参加していたあの人ねぇ」
と言われ、快く思われてなかったりするのでご注意ください。
「あの程度でそんなに威張るのかよ」
という感じでしょうか。
逆にアマチュアなのにすごい!という演奏をされるかた、歌われるかたは、威張りません。
大物気取りもなさいません。
気さくです。
堂々と自信を持って歌うことは大切ですが、自信を持つことといばることは違います。
つらつらと書きました。
難しく考えず、ようはみんなで一緒に楽しく切磋琢磨して演奏しよう!
セッションではみなで力を合わせてスイングさせましょう!
というご提案です(笑)
セッションに参加するときの心得、暗黙のルールなどは楽器奏者、ボーカル両方に共通事項なので、セッション参加前に、こちらもぜひご一読を。
セッションに参加する前の準備や、用意しておくとよいものなどについて。
実際にセッションに参加したときに知っておいたほうがよい暗黙のルールについて。
いろんな人たちと演奏するセッションは、慣れてしまえば楽しいです。
またお店によってもセッションの雰囲気が違うので、あちこちのお店のセッションに参加してみて、自分に合ったセッションを見つけるのもいいと思います。
いろんな人たちとセッションするのは勉強にもなります。
失敗することも多いですが、それがまた練習へのモチベーションにもなります。
セッションに行きましょう!