ハリウッド映画で俳優も!テナーサックスのデクスター・ゴードン

力強い、骨太なテナーサックスを聴かせるデクスター・ゴードン(Dexter Gordon 1923年~1990年 )

個人的に、私はデクスター・ゴードンのサックスは高倉健さんのようだと思っています。

音数が少ないという意味じゃなくて、孤独な男くささが漂う感じ。

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彼はミュージシャンとしてだけでなく、俳優として映画にも主役で出演。

映画「ラウンドミッドナイト(Round Midnight)」では、渋く味のある演技を見せてアカデミー賞の主演男優賞にノミネートまでされました。

デクスター・ゴードンのバイオグラフィー(経歴)

ビバップの洗礼を受けなかったデクスター・ゴードン

デクスター・ゴードンは、1945年カリフォルニアのロサンゼルスに生まれ。

医師だったジャズ好きな父親の影響で、デクスター・ゴードンもジャズに傾倒していきます。

最初はクラリネット、後にサックスを始め、10代にしてプロ活動を開始。

そしてニューヨークに進出。

ところが20代のデクスター・ゴードンは、麻薬におぼれてしまい、刑務所にも入ったことも。

1950年代のほぼ10年間、彼は麻薬にむしばまれた生活を送ります。

このデクスター・ゴードンが麻薬におぼれていた時期、ジャズの世界ではビバップと呼ばれる、細かいフレーズや、極限まで音階を使用するジャズが登場し大流行しました。

デクスター・ゴードンはビバップが流行っていた時期に麻薬にはまっていて、ビバップの影響を受けなかったため、彼のサックスはオーソドックスなスタイルになったと言われています。

ビバップが主流となった中で、ビバップの影響を受けていない彼のオーソドックスな演奏スタイルは、かえって新鮮に感じられたようです。

デクスター・ゴードンの演奏スタイルは、長い息で、長いフレーズ、深い音が特徴。

身長も190センチ超えの長身だったため、Long Tall Dexと呼ばれ「デックス」が愛称でした。

デクスター・ゴードンが吹くと、ビバップの代表曲ともいえる「チュニジアの夜(A Night In Tunisia)」も、また違った感じに聴こえます。

デクスター・ゴードン、ヨーロッパで復活

デクスター・ゴードンは1960年代に、ヨーロッパに渡ります。

この時期のジャズメンたちは、ヨーロッパに渡る人たちが多くいました。

特に麻薬中毒のジャズメンには、クスリの誘惑から離れるためにヨーロッパへ行くというケースもあったようです。

また麻薬がらみで逮捕され、ジャズクラブで演奏するライセンスを取り上げられたジャズメンも、仕事を求めてヨーロッパへ渡ったようです。

デクスター・ゴードンは14年間ヨーロッパに滞在し、各地で演奏活動をおこないます。

このヨーロッパ滞在中に、元プロテニス選手でデンマークでジャズクラブを経営していた男性と家族ぐるみの付き合いをするようになり、その経営者の息子の名付け親になります。

その息子というのが、ラーズ・ウルリッヒ(Lars Ulrich)

ヘビーメタルのバンド、メタリカ(Metallica)のドラマ―です。

70年代半ば、50代となったデックス・ゴードンは帰国し、活躍の場を本国アメリカに移します。

デクスター・ゴードン、俳優になる

1987年には、映画「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」で主役をつとめます。

ヨーロッパに滞在するアメリカ人ジャズメン(ピアニストのバド・パウエル(Bud Powell)がモデル)と、彼のジャズをこよなく愛するシングルファーザーのパリっ子との交流を描いた物語です。

セロニアス・モンク(Thelonious Monk) 作曲の有名な曲「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」も映画の中で、もちろん演奏されます。

デクスター・ゴードンはぶっきらぼうで無骨、独特の雰囲気をただよわせながら、なかなかの名演。

ちなみに音楽仲間のピアニストとして出演していたハービー・ハンコック(Herbie Hancock)は、この映画の音楽を担当し、アカデミー賞の作曲賞を受賞しています。

映画「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」については、こちらに書きました。

オフステージのジャズメンを描いた映画「ラウンド・ミッドナイト」
映画「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」はヨーロッパ滞在中のジャズピアニストのバド・パウエルがモデル。実際にジャズメンでテナー・サックス奏者として名をはせるデクスター・ゴードンが地のまま?といった感じで主演しました。
映画「レーナードの朝」にも出演

俳優としては、ロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズが出演した、1990年公開の「レーナードの朝」にも出演。

こちらはミュージシャンではなく、1人の俳優として、ロバート・デ・ニーロの患者仲間として出演しています。

若い頃には麻薬にはまり、生涯を通してアルコールと縁が切れなかったデクスター・ゴードンは、この時、かなりやせ衰えた別人のような風貌になっていました。

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ファッショニスタだったデクスター・ゴードン

デクスター・ゴードンは、かなりのファッション通でした。

マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の自叙伝に、そのことについて書かれています。

若かりし頃のマイルス・デイヴィスが出身地からジャズミュージシャンを目指してニューヨークへ出てきたとき、雑誌を見て

「これが最新ファッションだ!」

と思った洋服を着ていたそうです。

でもデクスター・ゴードンに

「それはもう古い」

と忠告され、流行りのファッションについて教えてもらったのだとか。

マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の自叙伝については、こちらに書きました。

マイルスの自叙伝はジャズメンの必須科目の教科書
「MILES THE AUTOBIOGRAPHY」(マイルス自叙伝)は、ジャズを愛する人なら、ミュージシャンやリスナーにかかわらず絶対に読むべき本。そのご紹介です。

マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の自叙伝はこちら。

オーソドックスな力強さを感じさせるサックス

デクスター・ゴードンのサックスは聴きやすい、ストレートなジャズ。

男っぽい、力強さも感じます。

この男くさいバラードには、惚れます。

デクスター・ゴードンのジャズは骨太な男、といった感じ。

「誰がなんと言おうとこれが俺のジャズだ」とでもいいたげな、うむを言わさないデクスター・ゴードンのサックス。

デクスター・ゴードンのサックスは、内に秘めた熱さを濃厚に感じさせるクールさ。

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やっぱり高倉健さんタイプのサックスだと思います。