素晴らしい演奏を繰り広げるジャズのレジェンドたちも、音楽から離れれば普通の人間。
いえ、もとい。
普通ではない。
個性的な人たち(笑)
そんな彼らに、おもしろいエピソードがないわけがありません。
「さよならバードランド」はスタン・ゲッツ(Stan Getz)のバンドにもいたベーシスト、ビル・クロウ(Bill Crow)が、ジャズメンの視点でジャズを内側から書いた本です。
「さよならバードランド」はベーシストであるビル・クロウ(Bill Crow)がジャズシーンの中で、実際に見聞きし、体験したジャズメンたちのエピソードが満載です。
「さよならバードランド」はいっきに読めるおもしろさ
ピル・クロウ(Bill Crow)が実際に見聞きしたジャズメンたちのエピソードとともに、ビル・クロウ(Bill Crow)自身が、どうやってジャズミュージシャンになっていったのか、その経過も書かれています。
故郷でどのように過ごし、故郷からニューヨークに出てきて、どうようにジャズを学び、どのように仕事を得ていったのか。
そういったことがリアルに本人の口から語られます。
この本がいわゆる自伝本と一線を画するのは、ビル・クロウ(Bill Crow)の成長記録にとどまっていないところ。
ビル・クロウ(Bill Crow)がニューヨークに出てきたのは、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)が活躍していた時代。
さまざまな大物ジャズミュージシャンのエピソードが出てきます。
今ではビッグネームになった人たちが、本の中では駆け出しだったり、苦労していたり、といったかたちでたびたび登場するので、先が気になって一気に読んでしまいました。
老舗ジャズクラブ「バードランド」
1949年、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)のニックネーム「バード(Bird)」にちなんだ老舗ジャズクラブ「バードランド(Birdland)」が開店しました。
場所はニューヨーク、マンハッタンで当時はジャズのメッカだったブロードウェイ52丁目。
チャーリー・パーカー(Charlie Parker)はもちろんのこと、マイルス・ディヴィス(Miles Davis)、アート・ブレイキー(Art Blakey)、そしてジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)など、そうそうたるメンバーが出演しました。
ビル・クロウ(Bill Crow)がジャズメンとして成長していく過程と同時進行で、ジャズの名門ともいえるジャズクラブの老舗「バードランド(Birdland)」のことが語られます。
ビバップが登場して、人々がジャズに熱狂していた時代の「バードランド(Birdland)」が華やかだった時代。
そこからポップスやロックに押されてジャズが衰退していくにつれ、ビル・クロウ(Bill Crow)もサイモン&ガーファンクル(Simon & Garfunkel)などジャズ以外の仕事もするようになり、「バードランド(Birdland)」もやがて閉店します。
そのようすが、ジャズの人気の移り変わりとともに語られます。
店名にちなんだ曲が作られるくらい、有名なジャズクラブだったバードランド。
バードランドにちなんで作られた曲
まずは超有名曲「ララバイ・オブ・バードランド(Lullaby of Birdland)」
作曲者のジョージ・シアリング(George Shearing)のバージョン。
※アップルミュージックに登録しなくても「再生」をクリックすると、曲の一部を試聴できます。Internet Explorer(インターネットエクスプローラー)で再生できない場合は、ブラウザをGoogle Chrome(グーグルクローム)やMicrosoft Edge(マイクロソフト エッジ)などに変更してください。
「ララバイ・オブ・バードランド(Lullaby of Birdland)」の歌ものでは、サラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)とクリフォード・ブラウンのバージョンが有名。
今でもセッションなんかでは、サラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)の、イントロとエンディングでスキャットするバージョンで歌う人、超多し。
ウエザーリポート(Weather Report)はずばり「バードランド(Birdland)」
この「バードランド(Birdland)」に、ジョン・ヘンドリクス(John Hendricks)がつけた歌詞には、バード(チャーリー・パーカー)や、マイルス、コルトレーン、マックス(ローチ)、キャノンボール、ベイシー、ブレイキー、と大物ジャズメンの名前が並びます。
その歌詞をコーラスグループのマンハッタン・トランスファーが歌って、またヒットさせました。
ちなみにバードランドは1965年に閉店しましたが、1986年に場所を変えてまた「バードランド」というジャズクラブができました。
そこからさらに場所を移し、2001年の時点では44丁目のあたりにありました。
2001年に1度行きましたが、少し広めのキャパで落ち着いた、いい感じのお店でした。
巻末の村上春樹さんによるレコードガイドが感動もの
そして巻末には、この本を訳した村上春樹さんによるレコードガイドがついています。
これは本に登場するジャズメンたちの録音、アルバムを、村上春樹さんの観点から紹介したもの。
かつてジャズ喫茶のお店をされていた、ジャズへの愛と知識が半端ない村上春樹さんのレコードガイドは、驚くほど詳細で大量。
感動ものです。
今まで知らなかった、あまり有名でないミュージシャンも聴いてみたくなります。
この本を読んだ後、本に出てきたジャズメンの演奏を聴くと、また違って聴こえます。
同じく、ビル・クロウの著作で「ジャズ・アネクドーツ」という本もおすすめです。
こちらは、ジャズメンたちのエピソードが中心。
あこがれのジャズメンたちの日常がうかがい知れて、とても興味深い一冊です。
ビル・クロウ本人についてや、演奏の紹介についてはこちらに書きました。