シンガーのマリーナ・ショウ(Marlena Shaw 1942年~)の歌は、とてもエモーショナル。
こちらのハートに直接、気さくに歌いかけてくる感じがします。
そのマリーナ・ショウの名盤アルバムをご紹介します。
マリーナ・ショウは「ストリート・ウォーキン・ウーマン(Street Walkin’ Woman)」がよくカバーされていて、よく知られているかも。
私は今は亡き師匠、オチジュンこと越智順子がよく歌っていた「ラヴィング・ユー・ワズ・ライク・ア・パーティ(Loving you was like a party)」が思い出深いです。
しばらく前ですが一時期、越智順子に憧れるジャズシンガーの卵ちゃんたちがこぞってこの「ラヴィング・ユー・ワズ・ライク・ア・パーティ(Loving you was like a party)」をカバーして歌ったので
「この曲、スタンダード曲かいっちゅうくらい演奏したで」
とぼやいて?いました(笑)
ところでこの、マリーナ・ショウ。
「ジャズ歌手なのか?」
と聞かれてしまうと、
「うーん」
と悩んでしまいます。
マリーナ・ショウはジャズも歌いますが、レパートリーは圧倒的にポップスやソウルっぽいものが多い。
「じゃあ、ソウルシンガーなのか?」
と聞かれると、それも即答しかねます。
マリーナ・ショウはソウルっぽいものやポップスを歌っても、フェイクの感じがジャズっぽいというか。
すごくスイングしているわけではないのですが、フェイクするときの音のチョイスがジャズっぽい。
例えば、このスティーヴィー・ワンダーの大ヒット曲「ユー・アー・ザーサンシャイン・オブ・マイ・ライフ(You are the sunshine of my life)」
この曲をフェイクして歌うシンガーは少なくありませんが、マリーナ・ショウのフェイクの仕方は、ジャズシンガーのフェイクのように感じます。
(↓Spotifyに登録すれば(無料でも可)フル再生できます)
かと思えば、ジャズを歌えば、ソウルテイストだったり。
いったいマリーナ・ショウはジャズなの?ソウルなの?と考え出すと混乱しますが、音楽にジャンル分けなんて必要ない!という見本のようなシンガーだと思います。
マリーナ・ショウの名盤
フー・イズ・ジス・ビッチ・エニウェイ (Who Is This Bitch, Anyway?)1975年
マリーナ・ショウといえば、日本ではこのアルバムが真っ先にあげられるくらいの超有名アルバム。
最初に聴いたとき、1曲目がいきなり男女のながーい会話で始まるので
「曲はないのん⁉」
と驚いてしまいました。
ところが、このながーい会話から重なるようにして始まる「ストリート・ウォーキン・ウーマン(Street Walkin’ Woman)」が最高。
ご機嫌な曲が続きますが、この曲をそこまでソウルフルにできるか?と驚いてしまう「フィール・ライク・メイキング・ラブ(Feel like making love)」へと続きます。
冒頭でご紹介した「ラヴィング・ユー・ワズ・ライク・ア・パーティ(Loving you was like a party)」も収録されています。
ライヴ・イン・トーキョー (Live In Tokyo)2002年
自慢話になります。
このアルバムは、東京のジャズクラブ「Bフラット(Bb)」で収録されたものですが、私はこのライブを生で見ました。
しかも、1列目のど真ん中の席で。
マリーナ・ショウの目の前で。
手を伸ばせば、マリーナ・ショウに触れそうな距離で。
開演ぎりぎりに到着したら、その席しか空いてなくて。
どうもみなさん、マリーナ・ショウの目の前の席は恐れ多いと思われたようで。
私は大阪人なので
「もうけた!マリーナさんの真ん前や!」
と喜んで座りましたが(笑)
そのとき、このマリーナ・ショウは、まぎれもなくジャズ歌手だと、私は思いました。
お客さんへのサービス精神も旺盛で、プロフェッショナルを感じさせるステージング。
この 「Bフラット(Bb)」でのライブのとき、ファーストとセカンドステージの間の休憩のときトイレに並んでいたのですが、突如
「すみません!マリーナ・ショウさんがおトイレに行かれるので、すみませんが通してください!」
と言う声がしたかと思うと、マリーナさんが登場。
「並んでいるのに、ごめんなさいね!お詫びに歌うわね(←もちろん英語で)」
と言ったかと思うと、何の曲だったか忘れましたが、本当に歌いながらトイレに消えていかれました(笑)
そんなところも、プロ意識だなあ、どんなときでもお客さんを楽しませるというか、フレンドリーというか。
カッコよかったです!
日本のジャズシンガーの卵ちゃんたちの中には、ときどき大物歌手ぶってエラそげにする人たちがいますが、マリーナさんのツメのアカを口の中に押し込んでやりたい(笑)
「フー・イズ・ジス・ビッチ・エニウェイ (Who Is This Bitch, Anyway?)」にも収録されている、ロバータ・フラックのヒット曲「フィール・ライク・メイキング・ラブ(Feel like making love)」が、また違った感じになっています。
(こういうふうに同じ曲を、違って歌える人が本当のジャズシンガーだと思います!)
君微笑めば(When you’re smiling)2007年
この「君微笑めば(When you’re smiling)」は今回初めて知ったアルバムですが、マリーナ・ショウには珍しく、全曲ではありませんが、ほぼジャズで構成されています。
フレディ・コール(Freddy Cole)というヴォーカル兼ジャズピアニストとのデュエット。
2人とも、心底楽しんで歌っているのが伝わってきます。
それにしても、どれもスタンダードな歌いつくされた曲なのに、マリーナ・ショウの手にかかれば
「そんなふうにフェイクするのか!」
と驚きの連続。
特に2曲目の「オール・オブ・ミー(All of me)」は、曲が進むにしたがって、マリーナ・ショウとフレディ・コール(Freddy Cole)のヴォーカルが絡み合っていくのが楽しいです。
全体的に、お互いのヴォーカルにこれでもか!と小粋に絡んでいくところが、ズート・シムズ(Zoot Sims)とアル・コーン(Al Cohn)を彷彿させます。
マリーナ・ショウ・ライヴ・アット・モントルー(Marlena Shaw Live at Montreux)1974年
マリーナ・ショウがモントルーに出演したときのライブ盤。
だいたいモントルーに出演できるっていうところが、マリーナ・ショウが一流のシンガーだと認められているということ。
7曲目の「ウーマン・オブ・ザ・ゲットー(Woman of the Ghetto)」ではアフリカ系霊歌(通常「黒人霊歌」と称されていますが、私は自分が「黄人」と呼ばれるのは嫌なのでなるべく「黒人」という言葉を使わないようにしています)風のメロディーに乗ってメンバー紹介(メロディーを歌うようなMCはベティ・カーター(Betty Carter) もお得意としたところ)したかと思えば、一瞬サイケロック?と思わせて、すっと曲に入っていくとろこが、すごい技術!
冒頭でご紹介した「ユー・アー・ザーサンシャイン・オブ・マイ・ライフ(You are the sunshine of my life)」も収録されています。
一時期は、よく来日されていました。
確か、ワークショップなんかもされていて、歌い方だけじゃなくステージングのアドバイスなんかもあったそうです。
もう高齢だから、来日はないかなあ。。。。
でも素晴らしい歌手と同じ時代に存在できて、生で歌を聴けたのは、本当に貴重な体験でした。