バド・パウエル（Bud Powell 1924年～1966年）は、後進のピアニストに多大な影響を与えたと言われているジャズピアニスト。
「芸術面での完璧さ、唯一無二の創造性、生み出した作品の偉大さといった点をふまえてミュージシャンをひとりだけ選べと言われたら、私はバド・パウエルを選ぶ。
彼はずば抜けた存在だ」
と言ったのはビル・エヴァンス（Bill Evans) 。
ビル・エヴァンス（Bill Evans)にそう言わしめたバド・パウエルはビバップのピアニストとして活躍しただけではなく、現在では当たり前となったベースとドラムとピアノという編成のピアノトリオを生み出した人です。
また、この時代のジャズメンに多かった麻薬やアルコールの悪癖や、精神疾患に悩まされた人でもありました。
バド・パウエルの生涯（前編）
バド・パウエルの生い立ち
1924年ニューヨーク生まれ。
バド・パウエルの父親はピアニスト、祖父はフラメンコのギタリスト。
パウエルは5歳から、クラシックピアノのレッスンを受け始めました。
10歳ごろから当時流行していたジャズに興味を持つようになり、パーティーなどで演奏するようになりますが、そのころの彼の演奏スタイルはファッツ・ウォーラー（Fats Waller）を真似たものでした。
15歳ごろには、トランペットとバイオリンを演奏する兄ウィリアム・パウエル（William Powell）のバンドで演奏していました。
そんなころパウエルはラジオで聴いたアート・テイタム（Art Tatum）の演奏に衝撃を受け、模倣するようになります。
バド・パウエルが影響されたアート・テイタム（Art Tatum）は、クラシック音楽のピアニストや指揮者も魅了されて、お客さんとして聴きにくるくらいの超技巧派。
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バド・パウエル、ビバップを知る
バド・パウエルはある日、チャーリー・パーカー（Charlie Parker)の演奏を聞き、衝撃を受けます。
そしてセロニアス・モンク（Thelonious Monk)とも知り合い、モンクにさまざまな教えを請い、またモンクにビバップ発祥の地となったミントンズ・プレイハウス（Minton’s Playhouse）で演奏しているミュージシャンたちにも紹介されます。
セロニアス・モンクとバド・パウエルの師弟関係は深い絆と愛情で結ばれた、兄弟のようなものでした。
モンクがパウエルをかばった件など、2人について詳しいことは「バド・パウエルのエピソード」に書きました。
どのくらい2人の絆が強かったかというと、お互いに曲やアルバムを捧げあっているくらい。
セロニアス・モンク（Thelonious Monk)は1947年に「イン・ウォークト・バド（In Walked Bud）」という曲を捧げます。
1968年のモンクのアルバム「アンダーグラウンド（Underground）」ではジョンヘンドリックス（John Hendricks)が歌詞をつけて歌ったものが再度収録されました。ディジー・ガレスピー（Dizzy Gillespie)やセロニアス・モンク（Thelonious Monk)、マックス・ローチ（Max Roach）などが歌詞に登場して、「バド・パウエルがやってきた」と歌います。
それに対して、バド・パウエルは、1961年にモンクの曲を取り上げたアルバム「ポートレート・オブ・セロニアス（A Portrait of Thelonious）」を制作。ジャケットの絵は、ニカ（Nica）によるもの。
バド・パウエル、酔っ払って警官に殴られる
バド・パウエルは、オスカー・ペティフォード (Oscar Pettiford）やディジー・ガレスピー（Dizzy Gillespie)のバンドへの誘いもありましたが、母親がまだ若いパドが何かと誘惑の多いナイトクラブで仕事することを許可しなかったので、兄ウィリアムとの仕事を続けていました。
そのウィリアムとの仕事も、1945年1月に終了。
その直後、パウエルは泥酔状態で通りをさまよっていたため、警察に採捕され投獄されます。
その際に警察に殴られ、パウエルは頭痛が10日間続きました。
いったんは観察のための病院に送られましたが、そののち、州の精神病院に2か月半入院しました。
バド・パウエル、ビバップの表舞台へ
退院後、バド・パウエルはマンハッタンでの演奏を開始。
1945年～1946年にかけて彼は、サラ・ヴォーン（Sarah Vaughan)や、デクスター・ゴードン（Dexter Gordon) 、ソニー・スティット（Sonny Stitt）、ファッツ・ナバロ（Fats Navarro） 、 ケニー・クラーク（Kenny Clarke）などのレコーディングに参加します。
1947年にはバド・パウエルは自身の初リーダー作をマックス・ローチ（Max Roach）、カーリー・ラッセル（Curley Russell）と共におこないました。
バド・パウエルの初レコーディング、1947年の録音を収録しているのは、以下の2枚のアルバムです。
また1947年にはチャーリー・パーカー（Charlie Parker)のアルバム「チャーリー・パーカー・メモリアル（Charlie Parker Memorial）」の vol. 1と2に、マイルス・デイヴィス（Miles Davis）やマックス・ローチ（Max Roach）と共に参加（vol.1では19～20曲目に参加。vol.2では6～8曲目に参加）
（後編）に続きます。
バド・パウエルは、ピアノトリオの形態を定着させ、ビバップの奏法だけでなく、ピアノの演奏方法についてもそれまでにない奏法を編み出しました。
「バド・パウエルの、何がそんなにいいのかわからない。
特に個性的でもない感じ」
という意見もあるようです。
これは、バド・パウエルの後に出てきたピアニストたちが、皆こぞってバド・パウエルのやっていることを取り入れたから。
バド・パウエルがもし存在しなかったら、ジャズピアノは今日のような演奏はしていなかったということ。
彼が、今日のジャズピアノの演奏スタイルを確立したと言ってもいいかも。
そいう意味で、すごい人です。
バド・パウエルのエピソードについてはこちら。
バド・パウエルの名曲と、他のジャズメンから捧げられた曲
バド・パウエルのジャズ名盤アルバム
バド・パウエルがサイドマンとして参加したアルバム
