ジャズシンガー、カーメン・マクレエ(Carmen McRae 1922年~1994年)の名盤ジャズアルバム【番外編】では、カーメンの他のアルバムと少し雰囲気が違うけど、ぜひおすすめしたいアルバムをご紹介します。
カーメン・マクレエの名盤、有名盤については、こちらでご紹介しています。
カーメン・マクレエの名盤(番外編)
ここでご紹介するアルバムは、カーメン・マクレエは本当に心底ジャズが好きだったんだなあと思ってしまうアルバムです。
他のジャズメンへのトリビュートアルバムは数々ありますが、カーメンのそれには他のジャズメンへの深い愛情と尊敬の念がより感じられます。
ファンのひいき目かもしれませんが。
カーメン・シングス・モンク(Carmen Sings Monk)1990年
セロニアス・モンクの曲を歌おうなんて、そんな無謀なことを誰が考えるでしょうか。
「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」は別として。
カーメン・マクレエはモンクへの尊敬と、モンクの音楽への愛情、そして確かな歌唱力があったからこそモンクの曲だけでヴォーカル・アルバムを作成できたのだと思います。
「カーメン・シングス・モンク(Carmen Sings Monk)」は、モンクの複雑なメロディラインを歌いこなすカーメンに、驚かされること間違いなしのアルバムです。
著作権の関係で、「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」以外は曲名が変更されていますが全曲セロニアス・モンクの曲や、セロニアス・モンクの十八番として有名な曲です。
【タイトルが変更されている曲】
「ストレートノーチェイサー(Straight, No Chaser)」→「ゲット・イット・ストレート(Get It Straight)」
「ルビー 、マイ・ディア(Ruby, My Dear)」→「ディア・ルビー(Dear Ruby)」
「ウェル、ユー・ニードント(Well, You Needn’t)」→「イッツ・オーヴァー・ナウ(It’s Over Now)」
「ブルー・モンク(Blue Monk)」→「モンクリィ・ブルース(Monkery’s the Blues)」
「アイ・ミーン・ユー(I Mean You)」→「ユー・ノウ・フー(You Know Who)」
「パノニカ(Pannonica)」→「リトル・バタフライ(Little Butterfly)」
「リズムーAーニング(Rhythm-A-Ning)」→「リッスン・トゥ・モンク(Listen To Monk)」
「アスク・ミー・ナウ(Ask Me Now)」→「ハウ・アイ・ウイッシュ(How I Wish)」
「モンクズ・ドリーム(Monk’s Dream)」→「マン、ザット・ワズ・ア・ドリーム(Man, That Was a Dream)」
「アグリー・ビューティ(Ugly Beauty)」→「スティル・ウィ・ドリーム(Still We Dream)」
「イン・ウォークド・パド(In Walked Bud)」→「サデンリィ(Suddenly)」
「リフレクションズ(Reflections)」→「ルッキング・バック(Looking Back)」
(↓Spotifyに登録すれば(無料でも可)フル再生できます)
メンバーは、ヴォーカルのカーメン・マクレエ(Carmen McRae)、ピアノはラリー・ウィリス(Larry Willis)とエリック・ガニソン(Eric Gunnison)、ソプラノサックスとテナーサックスのクリフォード・ジョーダン(Clifford Jordan)、同じくテナーサックスのチャーリー・ラウズ(Charlie Rouse)、ベースのジョージ・ムラーツ(George Mraz)、ドラムのアル・フォスター(Al Foster)
サラ:デディケイテッド・トゥ・ユー(Sarah:Dedicated to You)1991年
「サラ:デディケイテッド・トゥ・ユー(Sarah:Dedicated to You)」は、ジャズヴォーカリストのサラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)に捧げられたアルバム。
カーメン・マクレエは肺疾患のため1991年に引退したので、このアルバムがラストアルバムとなりました。
カーメンとサラはプライベートでも友人同士で、ジャズヴォーカルのアイリーン・クラール(Irene Kral)のラストライヴに連れ立って、お客さんとして現れたこともありました。
(その件については、こちらに書いています。)
このアルバムでは、自身もジャズヴォーカリストであるシャーリー・ホーン(Shirley Horn)がいつも一緒に演奏している自分のトリオ(ベースのチャールズ・エイブス(Charles Ables)とドラムのスティーヴ・ウィリアムス(Steve Williams))を引き連れて参加しています。
しかもシャーリー・ホーン(Shirley Horn)はこのアルバムではピアニストに徹していて、歌は歌いません。
このヴォーカリストが弾くピアノ(普段からシャーリー・ホーン(Shirley Horn)は弾き語りのスタイルですが)は、他のジャズピアニストが弾くピアノとは微妙に違う感じもして、それも興味を惹かれるところです。
メンバーは、ヴォーカルのカーメン・マクレエ(Carmen McRae)、演奏はシャーリー・ホーン(Shirley Horn)のトリオ(ベースのチャールズ・エイブス(Charles Ables)とドラムのスティーヴ・ウィリアムス(Steve Williams))
ザ・カーメン・マクレエーベティ・カーター・デュエッツ(The Carmen McRae-Betty Carter Duets (Great American Music Hall))1988年
「ザ・カーメン・マクレエーベティ・カーター・デュエッツ(The Carmen McRae-Betty Carter Duets (Great American Music Hall))」はその名の通り、カーメン・マクレエとベティ・カーター(Betty Carter) のデュエットアルバム。
ライブ盤なので、サービス精神たっぷりの2人のジョークに爆笑している観客の声も入っていて、楽しい雰囲気がそのまま伝わってきます。
カーメン・マクレエはサミー・ディヴィスJr.とのデュエットアルバム「ボーイ・ミーツ・ガール(Boy Meets Girl )」(1957年)もあり、それも洗練されていて素敵なのですが、ベティ・カーター(Betty Carter)とのデュエットは、ちょっと他に見ない、稀なデュエットです。
カーメン・マクレエもベティ・カーター(Betty Carter)も、即興や楽器顔負けのスキャットはお手の物な2人なので、この2人がデュエットするとどうなるか。
ぜひぜひ、1度聴いてびっくりしてください。
観客を楽しませながらも、丁々発止でスリリングな2人の歌のやり取りに、驚いてください。
「ホワッツ・ニュー(What’s New)」は久しぶりに再会した昔の恋人に近況を訪ねる歌ですが、即興上手な2人はこれを、久しぶりに会えてうれしい、なぜななら私はあなたのファンだから、というストーリーで、延々とお互いの歌が好きだ、好きだ~という替え歌にしてしまっています。
「ストーレン・モーメンツ(Stolen Moments)」なんていう何曲でデュエットなんて、この2人だからこそ。
全曲通して、お互いの歌まねをしあったり、お互いへの深い愛情と信頼が感じられます。
たまーに、ジャズの卵ちゃんたちの中には
「ジャズが好きっていうよりも、人前で歌うことが好きなんだろうなあ」
と思ってしまう人たちがいますが、カーメン・マクレエとベティ・カーター(Betty Carter)はジャズが好きで好きでたまらなくて、ジャズを歌うことが好きでたまらないって感じがします。
(最近、ジャズの卵ちゃんたちへの私の愚痴が多くなっているようで、恐縮です。m(_ _)m )
カーメン・マクレエがナット・キング・コールのレパートリーを歌った「ユー・アー・ルッキング・アット・ミー(You’re Lookin’ at Me)」も、「その曲をそんなふうに歌うのか!」ととてもおもしろかったのですが、Apple MusicでもSpotifyでも見つかりませんでした。
カーメン・マクレエの生い立ちや生涯、バイオグラフィーはこちらに書きました。
カーメン・マクレエの名盤、有名アルバムについてはこちらでご紹介しています。