ビバップのピアニスト、バド・パウエル(Bud Powell 1924年~1966年)の名盤のご紹介です。
バド・パウエルは麻薬やアルコール依存の問題を抱えていたうえに、精神疾患もあり治療のために電気ショック療法を受けています。
この電気ショック療法か、あるいは警官に殴られたときの後遺症で、バド・パウエルは後に指が動きにくくなり、かつての精彩を欠いたと言われています。
また、こういった背景の中、バド・パウエルの演奏は好不調の差が激しいとも言われています。
「これが名盤だ!」というのは、人によって若干違ったりもしますが、なるべく有名なものや名盤と言われることが多いアルバムを中心に取り上げます。
バド・パウエルの名盤
ザ・シーン・チェンジズ(The Scene Changes)1958年
バド・パウエルと言えば的な「クレオパトラの夢(Cleopatra’s Dream)」が収録されているアルバム「ザ・シーン・チェンジズ(The Scene Changes)」はバド・パウエルのアルバムの中で、一番有名と言っていいと思います。
「ジ・アメージング・バド・パウエル(The Amazing Bud Powell)」というブルー・ノートから出されたアルバムのシリーズは、vol.1からvol.5まであって、この「ザ・シーン・チェンジズ(The Scene Changes)」は「ジ・アメージング・バド・パウエル vol.5(The Amazing Bud Powell vol.5)」です。
このアルバムはバド・パウエルが電気ショック療法を受けた後の録音で、だんだん指が動かなくり初期の精彩は欠いているという意見もありますが、特に日本では人気があるようです。
全曲、バド・パウエル作曲。
(↓Spotifyに登録すれば(無料でも可)フル再生できます)
メンバーはベースのポール・チェンバース(Paul Chambers)、ドラムのアート・テイラー(Art Taylor)
ジ・アメイジング・バド・パウエル vol.1(The Amazing Bud Powell vol.1)1951年
その名も「ジ・アメージング・バド・パウエル(The Amazing Bud Powell)」というタイトルのアルバムで、「ジ・アメージング・バド・パウエル(The Amazing Bud Powell)」シリーズのvol.1です。
まだ電気ショック療法の影響があまり出ていなくて、絶好調のバド・パウエルの演奏です。
バド・パウエルの本当の演奏を知るなら、この「ジ・アメージング・バド・パウエル(The Amazing Bud Powell)」のvol.1とvol.2を聴けという意見もあるくらい。
アップテンポの曲ももちろんよいのですが、私はこのアルバムにおけるバド・パウエルのバラードの演奏が好きです。
メンバーは入れ替わり立ち代わりで、トランペットのファッツ・ナヴァロ (Fats Navarro)、テナーサックスのソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)、ベースのトミー・ポッター(Tommy Potter)とカーリー・ラッセル(Curly Russell)、ドラムのロイ・ヘインズ(Roy Haynes)とマックス・ローチ(Max Roach)
ジャズ・ジャイアント(Jazz Giant)1956年
「ジャズ・ジャイアント(Jazz Giant)」では、電気ショック療法前の、超高速でもミスタッチなしの絶好調なバド・パウエルの演奏が聴けます。
メンバーは、ベースは1~6曲目までがレイ・ブラウン(Ray Brown)、7~13曲目までがカーリー・ラッセル(Curley Russell)、ドラムはマックス・ローチ(Max Roach)
このアルバムを聴くと、こんなにすごい演奏をしていたのに、こののちに電気療法や、アルコール、抗精神病薬の影響で、半ば廃人のようになってしまって、往年の演奏ができなくなったというのが気の毒なかぎり。
ノーベル文学賞を受賞した作家の大江健三郎さんが、ヨーロッパで廃人のようになったバド・パウエルの演奏を実際に聞いたそうですが、そのときのバド・パウエルは、老いたセイウチのようだったと書いておられます。
演奏も、往年の輝きはなく凡庸な演奏だったのだそうですが、最後の曲だけ昔のバド・パウエルがよみがえったかのような、驚きの素晴らしい演奏だったのだとか。
バド・パウエルの芸術(Bud Powell Trio)1957年
こちらも、バド・パウエルの初期、絶好調なときの演奏で、名盤と評判のアルバム。
リリースは1957年ですが、1~8曲目までは1947年の録音。
9~16曲目までは、1953年に録音したもの。
メンバーは1~8曲目のベースがカーリー・ラッセル(Curly Russell)、ドラムはマックス・チ(Max Roach)、9~16曲目のベースはジョージ・デュヴィヴィエ(George Duvivier)、ドラムはアート・テイラー(Art Taylor)
バド・パウエル・イン・パリ(Bud Powell in Paris)1964年
バド・パウエルのアルバムは初期のものに人気が集まりがちですが、バド・パウエルの後期の名盤としてよく名前があがるのが「バド・パウエル・イン・パリ(Bud Powell in Paris)」です。
バド・パウエルが麻薬を断ち切ることができた、ヨーロッパ滞在中のものなので、演奏も好調。
デューク・エリントン(Duke Ellington)がプロデュースしたこのアルバム。
おなじみの曲も多し。
メンバーは、ベースのギルバート・ロヴェール(Gilbert Rovere)、ドラムのカンザス・フィールズ(Kansas Fields)
このほかにも、
- 「ジ・アメージング・バド・パウエル vol.2(The Amazing Bud Powell vol.2)」
- 「ジ・アメージング・バド・パウエル vol.3(The Amazing Bud Powell vol.3)」
チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)が設立したレコード・レーベルからリリースされた「インンナー・ファイアーズ(Inner Fires)」も隠れた名盤です。
バド・パウエルのバイオグラフィー(経歴)については、こちらに書きました。
(前編)
(後編)
バド・パウエルのエピソード
バド・パウエルの名曲&バド・パウエルに捧げられた曲
バド・パウエルがサイドマンとして参加したアルバム