アコースティックなジャズだったころのマイルス・デイヴィスの名盤②

マイルス・デイヴィス(Miles Davis 1926年~1991年)が、エレクトリックなジャズに移行する前、アコースティックなジャズを演奏していたころの名盤、おすすめアルバムのご紹介の続きです。

一言でアコースティックなころと言っても、探求心旺盛で、同じことを繰り返すのが嫌いだったマイルスのこと。

同じアコースティックなジャズでも、アルバムごとに雰囲気が変わります。

スポンサーリンク

①はこちら。

アコースティックなジャズだったころのマイルス・デイヴィスの名盤①
シンセサイザーやエレキギターを投入する前の、マイルス・デイヴィスの有名なアルバムを、私の好きな順番でご紹介します。

マイルス・デイヴィスがアコースティックだったころの名盤②

バグス・グルーヴ(Bags ‘Groove) 1957年

このアルバムでは、タイトル曲の「バグス・グルーヴ(Bags ‘Groove)」をはじめ、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)が作曲した「エアジン(Airegin)」「オレオ(Oleo)」「ドキシー(Doxy)」の3曲も、超有名曲となっています。

この「バグス・グルーヴ(Bags ‘Groove)」は、いわゆる「喧嘩セッション」でも有名なアルバム。

これはマイルス・デイヴィスが、先輩であるセロニアス・モンクに

「俺のソロのバックではピアノを弾くな」

と言ったというもの。

でもこれは、マイルスが頼んだときセロニアス・モンクも納得していた、世間でいうような険悪な雰囲気ではなく友好的な雰囲気のセッションだったとも言われています。

メンバーはトランペットのマイルス・デイビス(Miles Davis)、テナーサックスのソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)、ピアノのホレス・シルヴァー(Horace Silver)、ベースのパーシー・ヒース(Percy Heath)、ドラムのケニー・クラーク(Kenny Clarke)

タイトル曲の「バグス・グルーヴ(Bags ‘Groove)」は、ビブラフォンのミルト・ジャクソン(Milt Jackson)が参加して、ピアノはセロニアス・モンク(Thelonious Monk)になっています。

フォー・アンド・モア(FOUR & MORE)1966年

1964年にニューヨークで行われたコンサートのライブ盤。

このアルバムにはバラードなどの、スローな曲は1曲もありません。

全曲、速い、速い、全力疾走のテンポです。

「ウォーキン(Walkin’)」なんて、オリジナルに比べて、

「そこまで速くせんでもえんとちゃうのん?」

と思わず思ってしまうくらい、テンポが速いです。

ハービー・ハンコックの自叙伝「  ポシビリティーズ(Possibilities)」によると、あくまでハービーの想像で間違っているかもしれないがと断ったうえで、当時ドラムのトニー・ウィリアムスがまだティーンエイジャーの若さで、スローなテンポをキープするのが不得意だったからマイルスが速いテンポで演奏させていたんじゃないかということです。

メンバーは、トランペットのマイルス・デイビス(Miles Davis)、テナーサックスのジョージ・コールマン(George Coleman)、ピアノのハービー・ハンコック(Herbie Hancock)、ベースのロン・カーター(Ron Carter)、ドラムのトニー・ウイリアムス(Tony Williams) 

ラウンド・アバウト・ミッドナイト(’Round About Midnight)1956年

ラウンド・アバウト・ミッドナイト(’Round About Midnight)」に収録されているラウンド・ミッドナイト(’Round Midnight)」の作曲者は、言わずと知れたセロニアス・モンク(Thelonious Monk)

まだ駆け出しだった若いころのマイルスは、セロニアス・モンクにコードやジャズについて、さまざまなことを教わっていたそうです。

マイルスの自叙伝によると、この「ラウンド・ミッドナイト(’Round Midnight)」を演奏し始めたころは、セロニアス・モンク

「君はまだ、この曲を理解していない」

と言われたそうですが、そこから試行錯誤の後、再度モンクに演奏を聴かせたときにはオッケーが出たそうです。

そんなセロニアス・モンクお墨付きの渾身の演奏「ラウンド・ミッドナイト(’Round Midnight)」を聴くことができるアルバムです。

メンバーは、トランペットのマイルス・デイヴィス(Miles Davis)、テナーサックスのジョン・コルトレーン(John Coltrane)、ピアノのレッド・ガーランド(Red Garland)、ベースのポール・チェンバース(Paul Chambers) 、ドラムのフィリー・ジョー・ジョーンズ(Philly Joe Jones)

スケッチ・オブ・スペイン(Sketches of Spain)1960年

マイルス・ディヴィスの自叙伝を読んでいると、若い時のマイルスはクラシック音楽も積極的に聴いていて、奥さんのフランシスとバレエを見に行ってバレエ音楽にも魅了されてと、若いときからジャズの分野にこだわらずに音楽を聴いていたようです。

メンバーは、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)、ベースのポール・チェンバース(Paul Chambers) 、ドラムのジミー・コブ(Jimmy Cobb)、そのほか木管楽器の人たちが多数。

オーケストラかいっ!てくらいの大人数編成で、かなりの大所帯です。

スポンサーリンク

1曲目に収録されている「アランフェス協奏曲(Concierto de Aranjuez)」は、ギターの協奏曲。

1939年にスペインの盲目の作曲家ホアキン・ロドリーゴ(Joaquín Rodrigo)が作曲しました。

スペイン内戦の後、平和を祈って作られた曲と言われています。

これをマイルスのアルバムではおなじみのギル・エヴァンス(Gil Evans)が、ジャズに編曲。

原曲の雰囲気はそのままに、ときたまこそっとちょっとだけスイングさせてみたりと、心憎い仕上がりです。

この後、チック・コリア(Chick Corea)が、あの有名曲「スペイン(Spain)」のイントロに、この「アランフェス協奏曲(Concierto de Aranjuez)」のフレーズを使用。

伊藤君子さんは、「アランフェス協奏曲(Concierto de Aranjuez)」に歌詞をつけて「フォロー・ミー(Follow Me)」として歌いました。

もしかしてマイルス・デイヴィスが「アランフェス協奏曲(Concierto de Aranjuez)」を取り上げなかったら、チック・コリア(Chick Corea)の「スペイン(Spain)」や、伊藤君子さんの「フォロー・ミー(Follow Me)」は生まれなかったということでしょうか。

それにしても、この「アランフェス協奏曲(Concierto de Aranjuez)」を聴いて

「やってみよう」

と思ってやってしまうマイルスって、やっぱりすごい。

スポンサーリンク

以上、マイルス・デイヴィスがアコースティックなジャズを演奏していたころの名盤、おすすめアルバムのご紹介でした。

③に続きます。

アコースティックなジャズだったころのマイルス・デイヴィスの名盤③
同じ演奏を繰り返すのを嫌い、常に新しいジャズを追い求めたマイルス・デイヴィス。そのためアルバムごとに、マイルスは常に変化しています。エレクトリック期以前のマイルス・デイヴィスの名盤、有名アルバムのご紹介です。

①はこちら。

アコースティックなジャズだったころのマイルス・デイヴィスの名盤①
シンセサイザーやエレキギターを投入する前の、マイルス・デイヴィスの有名なアルバムを、私の好きな順番でご紹介します。