チャールズ・ミンガス(Charles Mingus 1922年~1979年)は、その気性の激しさをあらわすエピソードにことかかない人。
でも彼の場合、正義感の強さからくる気性の激しさという感じもします。
人種差別には反対していましたが、優れたジャズメンであれば白人でもバンドに雇いました。
そのいっぽうで「チャーリー(チャールズの愛称)」と呼ばれると、「チャールズと呼べ」と返す気難しい一面も。
一説によると譜面を作成することが苦手だったため、バンドのメンバーにアレンジや譜面の作成をしてもらっていましたが、自分の思うような仕上がりでないと激高しメンバーを殴ることも少なくなかたったようです。
うつ病、または双極性障害の傾向があったとも言われていて、そのせいかもしれません。
チェスや葉巻を愛するジェントルマンな一面も。
そんなチャールズ・ミンガスの数々のエピソードをご紹介します。
チャールズ・ミンガスの生涯については、こちらをご覧ください。
アートブレイキー(Art Blakey)とジャズ・メッセンジャーズ(The Jazz Messengers)の代表曲に「モーニン(Moanin’)」という曲がありますが、このチャールズ・ミンガスの「モーニン(Moanin’)」とは同名異曲。
難解なイメージのチャールス・ミンガスですが、この曲に難解さはあまりなく、とにかくご機嫌。
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お騒がせジャズメン チャールズ・ミンガスのエピソード
デューク・エリントンのオーケストラでの斧を振りまわした事件
まずはチャールズ・ミンガスが起こした事件で、一番?有名な、デューク・エリントン(Duke Ellington)のオーケストラで斧を振りまわした事件。
斧を振り回されたほうのファン・ティゾール(Juan Tizol)と、デューク・エリントンの語った話が、ジャズベース奏者でスタン・ゲッツ(Stan Getz)のバンドでも活躍したビル・クロウ(Bill Crow)の著書「ジャズ・アネクドーツ(Jazz Anecdotes)」(村上春樹訳)に書かれています。
ある日、あるフレーズを1オクターブ上げて弾きたいチャールズ・ミンガスに、「上げるべきではない」という趣旨のことをファン・ティゾールが言ったとき、チャールズ・ミンガスは侮辱されたと感じ立腹。
2人は喧嘩になります。
ファン・ティゾールは以前、護身用としてナイフを持ち歩いていて、それは周知の事実でした。
2人の喧嘩がヒートアップしたときに、チャールズ・ミンガスはファン・ティゾールがナイフを持っていると勘違いして斧を振り回したのだろう、というのがファン・ティゾール側の話。
でも同じ本でこの事件を語るデューク・エリントンの話は少し違っています。
ナイフを持ったファン・ティゾールがチャールズ・ミンガスに襲い掛かろうとして、それから逃れたチャールズ・ミンガスが激怒。
劇場にあった消火用の斧でファン・ティゾールの椅子をたたき割った、と語っています。
ミュージシャンは「話を盛る」習性を持っている人が多いようなので、この話も盛られた話かもしれませんが。
チャールズ・ミンガスはクビになっても、「デューク・エリントンズ・サウンド・オブ・ラヴ(Duke Ellington’s Sound of Love)」という曲まで作るくらい、デューク・エリントンが好き。
しかもこの「デューク・エリントンズ・サウンド・オブ・ラヴ(Duke Ellington’s Sound of Love)」という曲、とても美しいバラード。
チャールズ・ミンガスのデューク・エリントンへの思いが、ひしひしと感じられる曲です。
ちなみにこの「デューク・エリントンズ・サウンド・オブ・ラヴ(Duke Ellington’s Sound of Love)」には、ヴォーカル版もあります。
チャールズ・ミンガスがデューク・エリントンのオーケストラに在籍中に、斧を振り回した事件について書かれた、ビル・クロウ(Bill Crow)の著書「ジャズ・アネクドーツ(Jazz Anecdotes)」(村上春樹訳)については、こちらに書きました。
後日、そのデューク・エリントン名義のアルバムに、チャールズ・ミンガスはサイドマンとして参加しています。
バードランド事件に巻き込まれる
1955年、ジャズクラブのバードランドで、起きた事件。
この件に関しては、チャールズ・ミンガスが起こした事件ではなく、彼は巻き添えを食ったかたち。
この日の演奏メンバーはチャールズ・ミンガス、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)、パド・パウエル(Bud Powell)ら。
重度のジャンキーで遅刻常習犯のチャーリー・パーカーはこの日も遅刻してあらわれ、店のオーナーと言い争った後、同じくジャンキーでアルコール依存症&精神疾患、しかも薬物治療の電気ショックを受けた後でまともな会話も演奏もできない状態のパド・パウエルと一緒かよと愚痴ります。
ステージ上でも曲名をコールしたチャーリー・パーカーが、キーを尋ねたパド・パウエルに
「お前の得意なでたらめなキー!」
と怒鳴り返したり、ステージ上で
「パド・パウエル、パド・パウエル…..」
とマイクに向かって呪文のように唱えるなどの、嫌がらせを続けます。
見かねたチャールズ・ミンガスは別のマイクに向かって
「みなさん、私に責任はありませんがこれはジャズではありません。
この人たちは病気です。」
とアナウンスしたのだとか。
(チャーリー・パーカーも、パド・パウエルもどちらも重度の薬物中毒者なので、大阪で言うところの
「目くそ、鼻くそを笑う」
の世界かも(笑)
ファンから見れば
「しょうがないなあ(笑)」
だけど、共演者は一苦労かも(泣))
後編に続きます。
お騒がせベーシスト?チャールズ・ミンガスの事件簿は、まだまだ続きます。。。。
チャールズ・ミンガスの自伝?「敗け犬の下で(Bneath the Underdog)」についてはこちら。
チャールズ・ミンガスの生涯についてはこちら。
(前編)生い立ち~初めてベースを手にするまで
(後編)ジャズの世界へ踏み出してから晩年まで
チャールズ・ミンガスの名盤はこちら。
(前編)
(後編)
チャールズ・ミンガスがサイドマンとして参加した他人名義のアルバムはこちら。
(前編)
(後編)
気性の荒い?チャールズ・ミンガスのジャズは、力強くて、ロックな感じがします。
はまると、しばらく抜け出せません。