「枯葉(Autumn Leaves)」は、今ではジャズのスタンダード中のスタンダード、スタンダードの王道のような曲ですが、もともとはフランスで生まれたシャンソンです。
原題は「レ フェイユ モルトゥ(Les Feuilles mortes)」
この曲が作られた当初はヒットしなかったようなのですが、当時人気があったシャンソン歌手ジュリエット・グレコ(Juliette Gréco)が取り上げたことで、注目されるようになりました。
ジュリエット・グレコ(Juliette Gréco)が歌っているバージョンは、ヴォーカル編で試聴できます。
今回はこの「枯葉(Autumn Leaves)」を聴き比べします。
もちろん、英語版、ジャズの「枯葉(Autumn Leaves)」で。
「枯葉(Autumn Leaves)」の聴き比べ(インスト編)
「枯葉(Autumn Leaves)」で一番、有名なバージョンといえば、アルバム「サムシン・エルス(Somethin’ Else)」 におさめられたこのバージョンだと思います。
この「サムシン・エルス(Somethin’ Else)」は、キャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)名義になっていますが、実質的にはマイルス・デイヴィスのリーダー作。
契約上の問題で、キャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)名義になったと言われています。
どのくらい「サムシン・エルス(Somethin’ Else)」が有名かというと。
たとえば、ジャズシンガーのラシェル・フェレル(Rachelle Ferrell)は、「サムシン・エルス(Somethin’ Else)」で演奏されている有名なイントロをそのまま再現していますし、他のジャズメンも敬意を表して有名なリフを自身の演奏の中にモチーフとして取り入れたりしています。
例えば、私の大好きなジャズピアニスト、アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)だとこんな感じ。
いつものノリノリな感じで「枯葉(Autumn Leaves)」を演奏しているのですが、ちらっと「サムシン・エルス(Somethin’ Else)」の有名なリフをチョイ見せするところがニクイです。
ラシェル・フェレル(Rachelle Ferrell)が歌う「枯葉(Autumn Leaves)」は、ヴォーカル編で試聴していただけます。
「サムシン・エルス(Somethin’ Else)」と同じくらいか、次くらいに有名なのがビル・エヴァンス(Bill Evans) のバージョンだと思います。
「サムシン・エルス(Somethin’ Else)」の翌年1959年にレコーディングされました。
でも実は、ビル・エヴァンス(Bill Evans)よりも、「サムシン・エルス(Somethin’ Else)」よりも前の1952年に、スタン・ゲッツ (Stan Getz)が録音していたのでした。
スタン・ゲッツが、亡くなる3か月前におこなったケニー・バロン(Kenny Barron)とのデュオコンサートをおさめたアルバム「ピープル・タイム(People Time)」にも、「枯葉(Autumn Leaves)」が収録されています。
キース・ジャレット(Keith Jarrett)のピアノは、この曲にとてもよく合うように思います。
ボビー・ティモンズ(Bobby Timmons)は、アート・ブレイキー(Art Blakey)&ジャズ・メッセンジャーズ(Jazz Messengers)に在籍していたピアニスト。
ジャズ・メッセンジャーズを退団して、キャノンボール・アダレイと共演したりもしたのち、またジャズ・メッセンジャーズに戻ったという、出戻りメンバー。
そしてジャズ・メッセンジャーズの代表曲とも言える「モーニン(Moanin’)」を作曲者した人。
そのボビー・ティモンズ(Bobby Timmons)が演奏する「枯葉(Autumn Leaves)」
私のお気に入りバージョンでもあります。
いかにもアフリカ系アメリカ人的な強力なグルーブと、ブルースのフィーリングが、かっこよくてたまりません!
マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)の演奏する「枯葉(Autumn Leaves)」は、キース・ジャレットの繊細さに、ボビー・ティモンズのグルーブを付け足した感じがします。
個人的な感想ですが、キース・ジャレットとボビー・ティモンズの中間あたりにいる演奏。
こちらは私の大好きなズート・シムズ(Zoot Sims)とアル・コーン(Al Cohn)の、テナーサックス2本での「枯葉(Autumn Leaves)」
ズート・シムズ(Zoot Sims)単独での、別バージョンの「枯葉(Autumn Leaves)」もあって、それもおすすめです。
チェット・ベイカー(Chet Baker)が歌は封印して、トランぺッターに徹して気合の入った演奏を繰り広げる「枯葉(Autumn Leaves)」
疾走感があって、スリリングで、
「ただの甘い歌を歌う、トランペットも上手な人」
となめててごめんなさい!と思わず平謝りしたくなる演奏です。
キレッキレのドラムで刻んでくる、隙あらば細かく切り込んでくる、この異常にかっこいいドラムは誰やねん!と思ったらスティーヴ・ガッド(Steve Gadd)
するどい演奏ながら、せつなさを感じさせる、このいい感じのフェンダーローズは誰やねん!と思ったらボブ・ジェームス(Bob James)
その陰でもくもくと、でもさりげなくクールなベースラインを奏でるのは誰やねん!→ロン・カーター(Ron Carter)
チェット・ベイカーのトランペットの甘い音色をアルトサックスで再現するなんて、誰やねん!はポール・デスモンド( Paul Desmond)
という、メンバーも超豪華でうれくしくなってしまいます。
ギターのケニー・バレル(Kenny Burrell)は、バラードではじめると思わせておいて、スローなボサノヴァのようなラテンっぽい感じで。
まだまだありますが、このへんで。
「枯葉(Autumn Leaves)」はもともとはシャンソンですが、コード進行がアドリブに適しているというか、アドリブがしやすいコード進行なので、ジャズメンに好まれるようです。
セッションでも、よく取り上げられる曲。
聴いていても、いろんなバージョンがあって飽きません。
「枯葉(Autumn Leaves)」のヴォーカル編はこちら。