「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」はアメリカとフランスの合作映画で1986年公開。
実際のジャズメン、デクスター・ゴードン(Dexter Gordon )がそのままジャズメンとして主役を演じました。
主演のデクスター・ゴードン(Dexter Gordon ) は、本物のジャズミュージシャンでテナーサクソフォン奏者。
これが素人芸とあなどるなかれ。
無愛想で武骨な、お酒に目がないだめ男のジャズメンを、もしかしたら素のまま?演じて、いい味を出しています。
そして「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」の演技で、アカデミー賞の主演男優賞にノミネートまでされています。
「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」は映画としてもいい映画ですが、当時のジャズメンの普段のオフステージのようすなどが描かれていて、ジャズマンのリアルを感じられる映画です。
ジャズファンにはたまらない、豪華な出演者たち
「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」はジャズメンを主役にした映画なので、当然ジャズの演奏シーンがあります。
演奏シーンで共演していたり、中には、ちょっとした演技をしているジャズメンもいます。
映画「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」に出演しているジャズメンをあげていくと、ビリー・ヒギンズ(Billy Higgins)、ウェイン・ショーター(Wayne Shorter) 、ロン・カーター(Ron Carter)、トニー・ウィリアムス(Tony Williams)、フレディ・ハーバード(Freddie Hubbard)とジャズファンならたまらない、なんとも超豪華なメンバーです。
映画「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」のサントラ盤はこちら。
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サウンドトラックの1曲目はボビー・マクファーリン(Bobby McFerrin)による「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnaight)」
まるでトランペットのような、彼の声でメロディが奏でられます。
ボビー・マクファーリンといえば、昔この曲が流行りました。
ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)もこの映画「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」に、デクスター・ゴードン(Dexter Gordon)のバンド仲間で出演していますが、音楽も担当。
この映画「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」でアカデミー作曲賞を受賞しています。
実在のジャズピアニスト、バド・パウエルがモデル
当時のジャズミュージシャンたちは、こぞってヨーロッパにツアーに出かけました。
そのままヨーロッパにしばらく住み着くジャズメンも数多くいました。
芸術を愛する土壌があるヨーロッパ。
アメリカのような人種差別もなく、アフリカ系アメリカ人も、薬物中毒のジャズメンも、その芸術性だけを見て評価してくれるので、ジャズメンにとっては居心地のいい土地だったようです。
当時、深刻な薬物中毒から立ち直ろうとしていたと思われる、ジャズピアニストのバド・パウエル(Bud Powell「クレオパトラの夢」で有名)も、そんな1人でした。
映画「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」ではサックス奏者となっていますが、ヨーロッパに滞在していた頃のバド・パウエルと、フランス人デザイナー・フランス・ボラドラとの友情をベースとした、実話をもとにした映画と言われています。
バド・パウエル(Bud Powell)については、こちらに書きました。
テーマ曲「ラウンド・ミッドナイト(Round midnight)」の雰囲気が漂う映画
映画「ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)」は、これといってスリリングな展開があるわけではなく、ジャズメンの暮らし、ジャズの雰囲気そのものが映画全体にたちこめていて、音楽と雰囲気を楽しむ映画です。
主人公は演奏はぴかいちなのに、普段の生活は酒浸り。
お金があると浴びるほどお酒を飲むので、マネージャーに財布を取り上げられ、演奏後にホテルに戻れば、お酒を求めて出歩かないように部屋の外から鍵を閉められるという生活。
それを知ったジャズファンのフランス人は、一流のジャズメンがそんな扱いを受けていることにショックを受けます。
そして「自分が面倒を見るから」とマネージャーに申し出て、自分の部屋にジャズメンを引き取り、ヨーロッパ滞在中の彼の面倒を見ます。
フランス人は小さな娘を育てるシングルファザーで、この小さな女の子とジャズメンが、言葉が通じないながらも交流する姿に心あたたまるものがあります。
「ラウンド・ミッドナイト」は、もともとはセロニアス・モンク(Thelonious Monk)が作った曲です。
彼女はさまざまなジャズも歌っていますが、この曲も歌っています。
ジャズの雰囲気にどっぷりつかれる大人の映画
ジャズメンの暮らしを感じることができる、ジャズメンの息遣いを感じることができる大人の映画です。
ジャズメンのすさんだ暮らしを描いていますが、フランス人のジャズとジャズマンへの愛と献身、その小さな娘のあどけなさなどが、この映画にあたたかみを添えています。
ジャズファンはもちろん、ジャズを知らなくても楽しめる映画だと思います。
私がこの映画で印象に残っているシーンは、昔馴染みのジャズボーカルの女性が主人公の演奏を聴きにくる場面。
演奏の後、2人でぽつぽつと昔の思い出話を語りあうシーン。
大人のほろ苦さ、昔を懐かしむあたたかい空気などが、色濃く感じられるシーンでした。
いい映画です。おすすめです。
主演のデクスター・ゴードンについても書いてます。